1 サマリー

日経平均、東証株価指数(TOPIX)が史上最高値を更新した。トランプ関税の影響で25年度は大幅減益が予想されるが、市場では「26年度のV字回復を見込めば買える」との見方が広がったからだ。こうした例は過去にもあったが、今から買っても遅くないだろうか。最大のリスクは株式市場で楽観ムードが続かなかった場合だが、その場合でも中長期投資なら大きな問題はないだろう。

2 合意ドミノ、決算発表で株価上昇

25年4月に米トランプ政権が公表した相互関税は金融市場を大混乱させたが、7月下旬以降、米国が日本、欧州連合(EU)、中国と立て続けに関税について合意した“合意ドミノ”等をきっかけに、投資家心理が和らぎ株価が上昇した。

一方、同時期に発表された日本企業の最新の業績見通し(2月・3月決算企業約750社の純利益合計額)は、会社予想が前年度比9.7%減、市場予想も4.1%減と冴えない内容だ。日本は関税率が25%から15%に引き下げられることになったとはいえ、昨年度よりも税率が上がることに変わりはなく、輸出企業を中心に業績が圧迫されるのは当然といえよう。

ところが、この業績見通しを受けて日経平均、東証株価指数(TOPIX)ともに連日で史上最高値を更新するなど、株価上昇に弾みがついた。米連邦準備制度理事会(FRB)が9月にも利下げを再開するといった観測が高まったことなども株価を押し上げたが、25年度の大幅減益予想にもかかわらず株価が上昇ペースを速めたのは、「26年度は2桁増益が見込まれる」点に市場が着目したからだ。

要は、「今期は大幅減益を免れなくても、来期の大幅増益を前提にすれば今買ってもいい」という楽観的な見立てだ。今後、関税率が15%よりも高くならないことや、米国はじめ世界景気が失速しないことを前提にすれば、関税の影響が一巡する来年度の大幅増益を期待するのは、あながち間違いともいえない。