(ブルームバーグ):円が対ドルで今の狭いレンジから抜け出し、上昇に転じるとの見方が強まりつつある。
シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)のデータによると、円相場が1ドル=147円前後のレンジを上抜けし、145円を超えて円高が進む場合に利益が出るオプション取引のポジションをヘッジファンドなどが構築している。
ドル安・円高要因は幾つかあり、トランプ米大統領がクック連邦準備制度理事会(FRB)理事の解任を試み、利下げを促そうとしている動きがその一つ。
また、フランスの政情不安が円の安全資産としての需要を高める可能性もあり、今週発表される米雇用統計が弱い内容となれば、米利下げ観測が一段と強まり得る。
バークレイズ銀行(シンガポール)でアジア外国為替オプション部門を統括するムクンド・ダガ氏は「フランスでの不信任決議の可能性や、トランプ氏とクック氏の対立など一連の報道が出た後、ヘッジファンドの一部セクターでドルの対円下値を狙ったオプションへの関心がようやく高まりつつある」と述べた。

CMEのデータによれば、8月26日にはトランプ氏とクック氏の対立およびフランスの内閣信任投票に関する報道を受け、ドル・円プットオプションの取引はコールオプションの4倍に達した。
同日最も多く取引された9月限プットオプションの権利行使価格は144円93銭。30日のドル・円終値は147円5銭だった。ドル安・円高を見込むオプション需要の高まりは、バークレイズだけでなく他の金融機関でも指摘されている。
ノムラ・シンガポールで外為スポット取引を担当するグラハム・スモールショー氏は「ジャクソンホール会合(米カンザスシティー連銀の年次シンポジウム)でのパウエルFRB議長の講演以降、ドル・円下落を見込んだ関心が大半を占めている」と語った。
同氏によると、「ファストマネー勢が再び、1、2カ月のスパンでデジタルあるいは一般的なプットでドル・円下落構造にポジションを取り始めている」という。デジタルのプットオプションとは、為替レートがあらかじめ設定された水準を下回った場合に固定の支払いが得られる戦略だ。
今週は、厚生労働省が5日発表する7月の勤労統計調査(速報)が賃金の伸びを示せば、日銀による利上げ観測が強まり、円高要因となる可能性がある。8月下旬のジャクソンホール会合で、植田和男日銀総裁は労働市場の逼迫(ひっぱく)が賃金に上昇圧力をかけ続けるとの見方を示した。
一方、同じ5日に発表される8月の米雇用統計が労働市場の軟化を示せば、連邦準備制度による利下げ観測が再燃し、ドルに下押し圧力がかかる公算が大きい。
原題:Hedge Funds Are Betting Yen Is About to Make a Bullish Breakout(抜粋)
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