回転ずしチェーン「スシロー」を運営するFOOD&LIFE COMPANIESが中国市場攻略に動いている。山本雅啓社長は、現状の出店ペースを中長期でも維持し続け、「状況次第ではより高みを目指していく」と上振れの可能性を示唆した。

中国はデフレで外食チェーンの選別が厳しくなるが、山本氏は「成長余地はある」と25日のインタビューで話した。日本で食べるのとそん色ない味やエンタメ性を手に届く価格で提供していることが、同社の強みだと分析する。

F&LCOの山本社長(25日・都内)

中国大陸には2021年に進出し、北京などの「勝てる」と判断した都市に集中して出店する戦略を取る。前期(24年9月期)は10店舗、今期は7月までに17店舗出店した。また来期中に、スシロー以外のブランドも含め台湾なども含めた中華圏で、現状の152店舗から最大193店舗まで拡大する計画だ。

またコメ価格が影響するのは国内のみだとして、海外売上比率を伸ばすことで、国内のコスト圧力のバッファーになるとの見方も示した。

F&LCOは海外事業の拡大を進めており、来期中に米国でもスシロー1号店の出店を目指す。山本氏は「北米や欧州にも挑戦していかなければいけない」としており、中国事業で成功すれば同社の海外戦略にも弾みがつく。ただ、日本の外食チェーンにとって中国での事業展開は簡単ではない。同業のくら寿司は上海市の全3店舗の閉鎖を発表した。モスバーガーを展開するモスフードサービスも24年に中国市場から撤退した。

海外展開をスムーズに進めるには、主力の国内事業が盤石であることも欠かせない。コメ価格の高騰や消費者の節約志向など逆風が吹く中で、利益確保のための価格引き上げが客離れにつながるリスクもあり、外食各社は難しい舵取りを迫られている。

「デジロー」を使って注文する訪日客

山本氏は、価格だけでは勝負をせず、味や体験のすべてを磨くと強調。例えば、エンタメ性を高めるために23年から「デジロー」を順次導入している。大型のディスプレイに回転ずしを表示し、タッチして注文できるシステムだ。導入店舗では客数や客単価の上昇が確認されているといい、今後さらに設置店舗を増やす方針だ。

来期分のコメについては、コスト上昇を「ある程度の範囲内でマネージできる計画になっている」という。一律の値上げは今期や来期では考えていないとした一方で、「付加価値を加えられるものに対しては価格変更することはある」と述べた。

F&LCOの戦略は投資家からの支持も得られているようだ。同社の株価は年初来で約2.5倍になっており、上昇率では競合のくら寿司やカッパ・クリエイトを大きく上回る。18日には一時、時価総額が1兆円を超えた。

みずほ証券の朝枝英也アナリストは、海外は売上や店舗数が伸びて利益率も改善しており「非の打ちどころがない」と評価する。ただ「株価は過熱感がある」ほか、この秋の本決算発表時に中期経営計画のアップデートはないと考えられ、「利益確定で下がる可能性はあるだろう」と話した。

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