(ブルームバーグ):7月の米個人消費支出(PCE)統計では、消費支出が4カ月で最大の伸びとなった。根強いインフレの中でも底堅い需要が続いていることが示唆された。
消費支出の増加は所得の伸びに支えられ、特に財への支出がけん引した。

今回のPCE統計ではサービス価格の伸び加速がインフレ指標を押し上げたが、トランプ大統領による関税の影響が経済に波及する中、向こう数カ月に財価格の上昇がインフレに圧力をかけるとエコノミストは予想している。米国の消費者は現時点では支出を続けているものの、物価上昇と雇用市場減速の中で、その勢いがどの程度続くかは不透明だ。
サンタンデールUSキャピタル・マーケッツのチーフ米国エコノミスト、スティーブン・スタンリー氏は「消費支出は7月に堅調な伸びを示した」としながらも、「短期の消費見通しは不透明だ。関税に伴う価格上昇が価格設定の体系全体に近く波及すると私はみており、その時には消費者が支出を控えると予想される」と述べた。
先週開催されたカンザスシティー連銀主催の年次シンポジウム(ジャクソンホール会合)で、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、雇用市場に対するリスクが高まる中で、慎重ながらも9月の利下げに道を開いた。ただ、関税の消費者物価への影響は「今や鮮明になった」とも指摘した。
サービス価格の伸び加速
7月のインフレ加速は、2月以来の大幅な伸びとなったサービス価格が主に影響した。ポートフォリオの運用手数料は急増。数カ月にわたる株式相場の上昇が背景にある。スポーツやエンターテインメントのライブイベントを含む娯楽サービスの価格も上昇した。
注目されるエネルギーと住宅を除いたサービス価格は前月比0.4%上昇と、5カ月で最大の伸び。一方、財の価格は低下した。
消費支出の加速は主に商品購入、特に自動車や家具、スポーツ用品といった耐久財の購入がけん引した。
家計需要の原動力である労働市場は減速しているが、アマゾン・ドット・コムの「プライムデー」といった販促が財の消費を押し上げた。
ブルームバーグ・エコノミクスのエコノミスト、エステル・オウ、イライザ・ウィンガー、スチュアート・ポール各氏はリポートで「消費支出がやや上向いたとはいえ、増加の大半はオンラインセールのイベントが多かった月に消費者が値引きや販促を活用した結果に過ぎないと、われわれは考えている」と記した。
ウォルマートやホーム・デポ、ディックス・スポーティング・グッズといった小売り大手は需要の底堅さに楽観的な見方を示している。ただ関税に伴う物価上昇が見込まれていることや雇用環境の悪化を受け、消費者心理は依然として低調だ。
名目の賃金・給与は前月比0.6%増と、昨年11月以来の大幅な伸び。実質可処分所得は0.2%増。貯蓄率は横ばいだった。
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:US Consumer Spending Shows Resilience Despite Stubborn Inflation(抜粋)
(グラフやエコノミストのコメントを追加し、更新します)
--取材協力:Chris Middleton、Mark Niquette.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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