クック連邦準備制度理事会(FRB)理事にトランプ大統領が解任を通告した問題で、同理事が求めた仮差し止め令を巡る緊急審理が29日、ワシントンの連邦地裁で開かれた。2時間弱に及ぶ審理を経て、コブ判事は仮差し止め令の是非について判断を下さなかった。

トランプ大統領に理事解任の「正当な理由」があったかどうかが、審理の焦点。コブ連邦地裁判事はこの点に関する質問を双方の弁護士に浴びせたが、仮差し止めについて判断を下さず、審理は終了した。FRB独立性の今後を左右しかねない重要訴訟において、判事はどちら側に傾斜しているか示さなかった。

トランプ政権が繰り返してきたFRB批判は、この日の審理をもって法廷に場を移し、激しい法廷闘争がスタートした。最終的に最高裁まで持ち込まれる可能性が高いとみられる。トランプ大統領がクック理事に解任を通告したのは、同理事がかつて2つの住宅購入でローンを申請する際、いずれも主な居住物件と指定したとの疑惑を持たれていることが理由。クック理事は現時点でいかなる不正に関しても訴追されていない。

クック理事の代理人であるアビー・ローウェル弁護士は、不正の追及はトランプ大統領にとって、自分のアジェンダに邪魔な人物を排除する「常套手段」になっていると指摘。解任するのに「正当な理由」が見つからなかったことを示唆していると述べた。

トランプ氏が望むFRB理事は「一度も過ちを犯したことのない人物」ではなく、トランプ氏の「要求に応じて金利を引き下げる」人物だとローウェル氏は主張した。

ワシントンの連邦地裁に到着したアビー・ローウェル弁護士

米司法省側の弁護士ヤーコフ・ロス氏は、クック理事が現時点で疑惑について釈明していないのは何らかの不正を働いた事実を示唆していると主張。トランプ大統領には正当な理由によって同理事を解任する権利があると論じた。クック理事に説明の意図があれば「現時点までにわれわれの耳に入っているはずだ」と陳述した。

クック理事は28日にトランプ大統領を提訴。解任の試みは権力の掌握が狙いであり、米経済に「修復不能な危害」を与えかねないと非難した。また疑惑が生じた原因は、意図せぬ「事務上の手違い」にあるとの見方を示唆した。

ヤーコフ・ロス弁護士(右)

審理が始まる前、米司法省は裁判所に提出した文書で、トランプ大統領に理事解任の「正当な理由」があるかどうかについては大統領に判断を委ねるべきだと主張した。解任の仮差し止め令の発令要請を裁判所は退けるべきだとも述べた。

原題:Cook Hearing Ends With Tough Questions From Judge But No Ruling(抜粋)

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