トランプ米政権は、連邦準備制度の傘下にある全米12地区の連邦準備銀行への影響力を強める選択肢を検討している。ワシントンにある連邦準備制度理事会(FRB)での人事任命権を超えて影響力を拡大する可能性もある。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

トランプ大統領は25日にクックFRB理事の解任に動いたことで、法廷でこの措置が認められれば、7人で構成される理事会における過半数を掌握する可能性がある。しかし、金融政策の決定を担う連邦公開市場委員会(FOMC)のメンバーにはFRB理事のほかに5人の地区連銀総裁が含まれる。地区連銀総裁はFRB理事とは異なり、ホワイトハウスの指名や上院の承認を受けずに選出されている。

ワシントンで開催されたFRBの会合(6月25日)

地区連銀総裁の指名や再任の手続きについて、政権が監視を強化することは、トランプ氏が進める金融政策への影響力拡大の一環であり、政治的圧力から一定の独立性を保ってきた中央銀行の慣例に対する異例の動きとなる。

指名・再任の手続きは通常、9人で構成される各地区連銀理事会のうち、地元民間銀行代表を指すクラスAの3人を除いたクラスB(地元の企業経営者など)およびクラスC(FRBが選出)のそれぞれ3人と、FRBが責任を負っている。

FRBは5年に1度、地区連銀総裁の任期更新承認採決を行っており、次回は来年2月に予定されている。トランプ氏がクック氏解任の意向を表明したことで、この承認プロセスが新たな焦点として浮上している。

事情に詳しい複数の関係者によると、一部の地区連銀総裁は今夏の早い時期に、トランプ政権が連邦準備制度に対して取ろうとしている姿勢に不安を抱き始めた。25日遅くのトランプ氏の発表を受けて懸念は一層高まり、複数の総裁が互いに連絡を取り合い、今回の動きが自身の立場にどのような影響を与えるかについて意見交換を行ったという。

FRBの報道担当者はコメントを控えた。ホワイトハウスもコメント要請に現時点で回答していない。

調査会社LHマイヤー/マネタリー・ポリシー・アナリティクスのエコノミスト、デレク・タン氏は「ホワイトハウスは、連邦準備制度を変える手段がどこにあるのか、あらゆる手を尽くして調べている」と指摘した。

タン氏によれば、その手段の一つとなり得るのが、地区連銀総裁の再任承認採決だ。政権がFRB理事の過半数を掌握すれば、タカ派と見なす連銀総裁に対して、再任承認採決をテコとして間接的な圧力をかけることが可能になるという。再任承認は「これまでは当然のように行われていた」と同氏は付け加えた。

事情に詳しい関係者によると、政権の狙いは連邦準備制度をハト派寄りに転換させることではなく、上院承認を経ない地区連銀総裁の選出プロセスを精査することにあるという。

FOMCで政策金利決定に投票権を持つ5人の地区連銀総裁は、ニューヨーク連銀総裁と、残り11行の総裁のうち毎年交代で選出される4人で構成されている。

FRB副議長を務めたラエル・ブレイナード氏は26日、複数の地区連銀総裁を更迭してFOMCの構成を刷新しようとする政治的な動きは、インフレ率や長期金利を押し上げるリスクがあると警告した。

原題:Trump Team Weighing Options to Extend Influence to Fed Banks (2)(抜粋)

--取材協力:Maria Eloisa Capurro、Catarina Saraiva、Nancy Cook、Amara Omeokwe、Catherine Lucey.

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