米国のワイオミング州ジャクソンホールで開催された年次シンポジウムで、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長が利下げに前向きな発言をしたことで、25日の日本市場では円相場が前週末夕と比べて上昇し、日経平均株価は一時500円超値上がりした。

パウエル議長は22日、労働市場のリスクの高まりに言及。「リスクのバランスが変化しており、政策スタンスの調整を正当化する可能性がある」と述べた。日本銀行の植田和男総裁は持続的な賃金上昇圧力を強調した。

市場関係者の見方は以下の通り:

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の藤原和也債券ストラテジスト

パウエル議長の講演はタカ派的な内容が予想されていたが、だいぶハト派的だった。9月の利下げ再開に向けて一歩前進だ。とはいえ、データ次第というスタンスは変えておらず、データを丁寧に確認する時間帯が続きそうだ。米金利の低下に追随して債券相場は強含みで推移するだろうが、日銀の利上げ期待や財政拡張懸念で上値余地は広がりにくい。日米の金融政策は逆方向を向いており、米長期金利が大きく低下した割に日本国債先物夜間取引の上昇幅は限定的だった。

センジン・キャピタルの最高経営責任者(CEO)、ジェイミー・ハルス氏

短期的には世界の市場にとってプラス材料になるとみる。米金利が下がり他国の金利が変わらない場合、米ドル建ての投資は魅力が薄れるため、より高いリターンを求めて米国から資本が流出、ドル安が進むだろう。植田総裁のタカ派的な姿勢が重なり、ドルに対して円高が進む可能性がある。これは、大型の輸出企業や海外に大きな利益源を持つ企業の業績に悪影響を与える一方、ドル建ての原材料を使用する内需などの中小型企業には恩恵となる。

リード・キャピタルの副最高投資責任者(CIO)、ジェラルド・ガン氏

円高の進行が緩やかであれば、日本のリスク資産にとって大きな問題にはならない。もし円が急上昇するようであれば、日銀は来年の利上げペースを鈍化させる可能性が高い。日銀が円相場を注視していることや、円のボラティリティーが高まらないと考えると、日本株が来年にかけて上昇基調を維持する可能性が高い。

SBIリクイディティ・マーケットの上田真理人金融市場調査部長

パウエル議長は9月利下げを認めている感じだが、そこまでハト派ではなくあとはデータ次第と言っている。タカ派的な発言が期待されてドル・円が上昇した分が剝げ落ちた。また、植田総裁は思ったよりも利上げに意欲を示したように見える。

バンエックのクロスアセット・ストラテジスト、アンナ・ウー氏

パウエル議長の講演はハト派的で、9月の利下げに対する障害を取り除き、リスク選好を高めるものとなった。これは株式と短期債にとって追い風で、日本株は投資家心理の改善によって押し上げられるだろう。今週発表されるエヌビディアの決算と米個人消費支出(PCE)価格指数が、上昇が持続可能かどうかを見極める重要な材料になる。円高による株式への下押し圧力は限定的とみられ、ジャクソンホール前に株式の上昇は抑えられていたため、上昇余地が残されている。

富国生命保険の野崎誠一有価証券部長

日本株は直近の上昇スピードが早かったため、米国株に比べて上昇の勢いは限られるだろう。一方で米国株もかなり上昇しており、ショックには脆弱(ぜいじゃく)になっている。労働市場が想定より強かったり、インフレが急速に強まったりする場合には急速に調整するリスクがあり、そうなれば日本株にもネガティブだ。為替は円高方向だろうが、1ドル=147円程度であれば企業のガイダンスの前提よりまだ円安で、日本株への影響は限定的だろう。

三井住友トラスト・アセットマネジメントの稲留克俊シニアストラテジスト

米国債が買われた影響で債券相場には買いが先行。ただ、ジャクソンホール会合の影響は長くは続かないだろう。上値の重さがどこかで改めて意識される。先週も日銀の利上げの観測、財政の先行き不安で国内金利は上昇した。財政不安は今までと全く変わらない。

(コメントを追加しました)

--取材協力:日高正裕、山中英典、アリス・フレンチ、堤健太郎、清原真里.

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.