(ブルームバーグ):大きな利益を狙う小規模企業には簡単な手があった。暗号資産(仮想通貨)を積極的に購入し、自社株の急騰を見届けたうえで、さらなる暗号資産購入のための資金を株式で調達する。「デジタル資産トレジャリー(DAT)」と呼ばれる手法だ。しかし、この3つ目のステップが一部の投資家に嫌われ、株価の急落を招くようになっている。
DAT企業の投資家層は個人トレーダーが大半を占め、これら企業が株式による資金調達を届け出た後、持ち分を売却するようになっている。その結果、高騰していた株価が一気に下落するという構図だ。
「イーサジラ(ETHZilla)」としてビジネスを展開する180ライフ・サイエンシズの株価は14日、29%下落した。株式による最大5億ドル(約740億円)の資金調達の仕組みについて合意を発表した直後だった。バイオ企業からDAT企業に転換した同社は、その2日前に保有するイーサリアムの評価額が約3億5000万ドルに達したと公表。株価は1日で3倍に上昇していた。
米シャープリンク・ゲーミングの株価は6月13日に72%下落。米証券取引委員会(SEC)に投資家グループによる株式売却の計画を届け出た直後だった。米ビットマイン・イマージョン・テクノロジーズも最大20億ドルの株式の売却を含む一括登録の届出書を提出した後に株価が40%下落した。

多くの個人投資家はこうした行動が出ると売り時と判断。希薄化への懸念に加え、届け出があった株式のすべてが売却されると見込んで利益確定を急ぐ形だ。
しかし、ローエンスタイン・サンドラーのパートナー、ダニエル・フォーマン氏は、「多くのケースでは、すぐに売却されることはないし、投資家は売却できない。なぜなら登録届出書はまだ有効でないからだ」と指摘している。
こうした急落に見舞われてもDAT企業の株価は高止まりしている。イーサジラは7月下旬に戦略を公表してから株価が136%上昇。以前はスポーツ賭博関連のサービスを手がけていたシャープリンク株は5月の方針転換以降、約210%高騰した。
「9割は生き残れない」
個人投資家のレザ・イブラヒム氏(26)は、投資しているDAT企業の株価がまもなく天井に達すると予想している。シャープリンク株はすでに売却して150%の利益を確定。暗号資産価格の下落を見込む第4四半期には全ての持ち株を売却する計画だという。
ジュアン・プラセンシア氏(56)は、シャープリンク株の半数を売却して利益確定。他社と比べて割安なため残りは保有し続けている。ビットマイン株については、7月のSECへの届け出を受け、全て売却したという。
米法律事務所シチェンツィア・ロス・アンド・フリードマンの創業パートナー、グレゴリー・シチェンツィア氏は「こうした企業の9割は生き残れない。バブルがはじけ、株価は暴落し、資金調達手段も断たれるだろう。実行力のある数社だけが生き残る」と語っている。
原題:Retail Traders Ditch Crypto-Holding Firms on Stock Dilution Fear(抜粋)
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