(ブルームバーグ):米国の新規株式公開(IPO)における公開価格が過小評価されているとの批判は誇張されている可能性がある。新たな研究結果で明らかになった。上場初日の急騰は熱狂的なごく一部の投資家によるものが多いという。
ノースイースタン大学ダモア・マッキム・スクール・オブ・ビジネスのジョセフ・ヘンリー准教授と、メリーランド大学ロバート・H・スミス・スクール・オブ・ビジネスのテリー・オブライエン氏が実施した過去30年超の市場データ分析によると、米国のIPOにおける過小評価の規模は一般的に想定されているほど大きくはなく、実際の規模は想定を最大40%下回る可能性があることが示された。
ヘンリー氏はブルームバーグ・ニュースの取材に対し、IPO価格が過小評価されているという主張について、コンサートの座席指定チケットに大金を支払った熱狂的なファンがいたことを受け、「その価格で全ての座席を販売できた」と考えるのと同様の論理だと指摘。「誰もがそのコンサートにそれほど行きたいわけではない」と話した。

デザインソフトの米フィグマは7月末、ニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場し、初日の取引をIPO価格の3.5倍で終えた。ブルームバーグがまとめたデータによれば、10億ドル(約1480億円)以上を調達した米上場企業の取引初日としては、少なくとも過去30年で最大の上げとなった。
ステーブルコインの発行元であるサークル・インターネット・グループやドローンメーカーのAIROグループ・ホールディングスも6月の上場初日にそれぞれ100%余り上昇している。
こうした値動きを受け、ウォール街の金融機関や発行体によって設定されるIPO価格が市場の需要に比べて低過ぎるのではないかとの議論が再燃している。
ヘンリー、オブライエン両氏は値動きだけでなく出来高を考慮した新たな測定方法によって分析。ヘンリー氏によると、取引開始時に売買される株数は公募・売り出し株数のおよそ10%に過ぎず、これを考慮すると上場初日の株価急騰は見かけほど大幅ではないという。
ヘンリー氏は「過小評価が全く存在しないと主張するわけではない。どれほど深刻な問題なのかという話だ。価格変動とその出来高が何を意味するのかを慎重に考慮すれば、IPO市場全体が機能不全に陥っているとまでは言えない」と語った。
原題:US IPO Day-One Surges Driven by ‘Superfan’ Scramble, Study Says(抜粋)
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