(ブルームバーグ):S&Pグローバル・レーティングは18日、米国の長期ソブリン信用格付けを「AA+」に据え置くと発表した。米経済の回復力が今後も続くとの見込みを反映し、格付け見通しは「安定的」とした。
世界最大の米債券市場の投資家は、米国の財政赤字を懸念し、債務の持続可能性に広く疑念を抱いてきただけにS&Pが今回示した見解は重要な意味を持つ。
米国ではトランプ政権1期目で導入された大型所得減税の恒久化を柱とする税制・歳出法が7月に成立し、債務上限も5兆ドル(約739兆円)引き上げられた。財政赤字の増大が予想されるが、主要貿易相手国・地域に課す関税の収入が痛みを部分的に緩和し、米国は信用力を維持できるとS&Pは分析した。
トランプ氏は自ら推進する歴史的な関税政策が米経済に打撃を与えるとの主張に反論してきたが、S&Pの格付け評価は、大統領にとって朗報となる。
米国の短期格付けも「A-1+」に据え置かれた。S&Pは、信頼性の高い効果的金融政策の実行に加え、赤字は高水準だが拡大基調にない財政状況が、一般政府純債務の増加と債務上限引き上げを支える状況に言及した。
S&Pのアナリスト、リサ・シネラー氏らは「(税と歳出の増減を両方含む)最近の税制・歳出立法に関係すると思われる財政悪化は、実効関税率上昇に伴う関税収入の増加でおおむね相殺される」と予測した。

S&Pは米国の格付け見通しを安定的としたことについて、財政赤字が今後数年で顕著に改善されることはないにしろ、持続的に悪化することもないとの予想を反映したと説明。一般政府純債務は今後3年で国内総生産(GDP)比100%を上回るが、2025-28年の一般政府赤字は平均でGDP比6%と、昨年の7.5%から低下するとした。
米議会予算局(CBO)は、トランプ政権の大型減税が実行に移された場合、財政赤字が今後10年で約3兆4000億ドル増えると試算していた。
アジア時間19日午前の取引で、米30年国債利回りは4.93%、10年国債利回りは4.33%と、ニューヨーク時間18日の取引終盤からほぼ変わらずで推移した。ドル指数は約0.1%上昇した。
ムーディーズ・レーティングスは今年5月、米国の長期発行体格付けと無担保優先債格付けを最上位の「Aaa(トリプルA相当)」から「Aa1(ダブルAクラス)」に1段階引き下げたと発表。S&Pとフィッチ・レーティングスに続く格下げにより、世界一の経済大国が主要格付け会社によるトリプルA格付けを全て失った。
原題:Trump Tariffs Get Seal of Approval as S&P Affirms Credit Rating(抜粋)
(S&Pの米財政見通しなどを追加して更新します)
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