(ブルームバーグ):ウクライナのゼレンスキー大統領と欧州首脳は18日、ワシントンでトランプ米大統領と会談し、15日の米ロ首脳会談で、同氏がロシアのプーチン大統領と交わした約束を見極めようとしている。欧州やウクライナには、トランプ氏がウクライナにとって受け入れがたい譲歩を迫るのではないかとの懸念が広がっている。
トランプ氏はゼレンスキー氏や複数の欧州首脳を招き、アラスカでプーチン氏と協議した和平案について説明する。米国側はロシアが要求する領土を巡る譲歩に重点を置くとみられるが、ウクライナ側は安全の保証を具体化しようとする考えだと、事情に詳しい関係者が述べた。
トランプ氏の公式日程によると、トランプ氏は米東部時間18日午後1時15分(日本時間19日午前2時15分)にホワイトハウスでゼレンスキー氏と会談する。また、同日午後3時に欧州首脳らとの多国間会合にも参加する。
欧州やウクライナは不安を募らせている。ウクライナが反対しかねないトランプ氏の要求に抵抗できる手段が乏しい上、プーチン氏が本当に和平を望んでいるのかについても懐疑的だ。もう一つの難題は、トランプ氏が早期の和平合意を望んでいる一方、その実現方法についてはほとんど明確にしていないことだ。
欧州連合(EU)27カ国の首脳は、ブリュッセル時間19日午後1時にオンライン形式で会合を開き、18日のワシントンでの会談について報告を受ける。コスタ欧州理事会常任議長(EU大統領)がXへの投稿で明らかにした。コスタ氏は「米国と共に、EUはウクライナと欧州の重要な安全保障上の利益を守る持続的な平和の実現に向け、引き続き取り組んでいく」と記した。

非公開情報だとして事情に詳しい複数の関係者が匿名を条件に話したところによると、トランプ氏は週末の電話協議で、米国がウクライナの「安全の保証」に関与する用意があると各国首脳に伝えたという。
トランプ氏はまた、早期に合意に至りたい意向を示し、ウクライナに同意を促す考えを表明。1週間以内にプーチン氏とゼレンスキー氏の会談開催を目指すとしている。
しかし欧州側では、未解決の課題が多い現状を踏まえ、このスケジュールはあまりに拙速だとの見方が大勢だ。
関係者によると、トランプ氏は同盟国との電話会談でプーチン氏との協議内容の要点は明かしたものの、詳細には踏み込まなかった。欧州の高官らは非公式に不満を漏らし、米ロ首脳会談ではプーチン氏が最も大きな利益を得たようだとの認識を示した。
トランプ氏は自身のSNS「トゥルース・ソーシャル」への投稿で、ゼレンスキー氏が望めば「ロシアとの戦争をほぼ即座に終わらせることができるし、あるいは戦い続けることも可能だ」と指摘。クリミア半島が返還されることはないと示唆したほか、ウクライナの北大西洋条約機構(NATO)加盟も認められないとしたが、詳細は明らかにしなかった。
欧州側は、トランプ氏の側近が、早期合意に対する期待を抑えようとしている点にも注目している。米ロ首脳会談に同席したルビオ米国務長官は17日、FOXニュースの番組で「われわれは和平合意の直前ではない。ただし進展はあった」とした上で、「まだ道のりは長い」と強調した。
一連のテレビインタビューで、ルビオ氏は、18日の会合はウクライナに対する安全の保証、とりわけ米国が果たす役割に焦点を当てると説明した。同氏は、交渉が決裂しても米国の損失は少なく、戦争継続は米国民の日常生活にほとんど影響しないとの見解を示し、トランプ氏が紛争から距離を置く可能性を示唆した。
事態は切迫している。ロシア軍はウクライナ東部で緩やかながらも着実に前進を続けている。トランプ氏が米国の支援を縮小したことで、欧州が兵器や弾薬の不足を補えるかどうかは不透明だ。

ブルームバーグ・ニュースは今月、米ロがウクライナ停戦協定の締結を目指して進めている交渉で、合意案にはクリミアとドンバス地方の事実上の領土割譲の他、ロシアがウクライナのヘルソン州およびザポリージャ州における現在の前線で攻撃を停止することが含まれる見通しと報じた。
トランプ氏が示唆してきた領土割譲が実現すれば、プーチン氏に一方的に利することになる。ロシアが新たな領土を獲得する一方、ウクライナは自国領を割譲するだけになる恐れがある。
ゼレンスキー氏と共にワシントンでの会合に出席するフランスのマクロン大統領は「もし今、ロシアに対して弱腰であれば、将来の紛争の下地を作ることになる。それはウクライナだけでなく、われわれ自身にも影響が及ぶ可能性がある」と述べた。
英国のスターマー首相の報道官は18日、会談を前に記者団に対し、重要な焦点は、安全の保証がどのように機能するのか詳細を得ることと述べた。英国は、米国から十分な支援が得られる限り、ウクライナに「抑止力部隊」を派遣する用意があることを改めて表明している。報道官は「プーチン氏に関して、信頼に委ねることなど決してしない」と述べた。
原題:US Allies Set to Plead With Trump to Stand Behind Ukraine (3)
EU Leaders to Meet Virtually Tuesday to Discuss Trump Meeting
(抜粋)
(第5段落にEU首脳会合の予定を追加します)
--取材協力:Daryna Krasnolutska、Eric Martin、Phil Serafino.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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