メタ・プラットフォームズは、人工知能(AI)分野で最も優秀な人材を結集するため、巨額の資金を投じている。だが天才を集め過ぎたチームは失敗に終わるという研究結果もあり、適切なマネジメントが成功の鍵を握る。

メタはこれまでに対話型AI「ChatGPT」で知られるオープンAIから10人余りの技術者を獲得。ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)は、結集したトップ人材にリソースを無制限に提供することで、競合他社に追い付き、人間の能力を上回る汎用AI(AGI)開発に近づくことを目指す。

AI部門を再編し、約50人で構成する「メタ・ スーパーインテリジェンス・ラボ」(MSL)は、スケールAIでCEOを務めたアレクサンドル・ワン氏、マイクロソフト傘下のソフトウエア開発プラットフォーム、米ギットハブのCEO経験者ナット・フリードマン氏が率いている。

ハーバードビジネススクールで20年以上チームダイナミクスを研究してきたボリス・グロイスバーグ教授は「ウォール街やシリコンバレーには、最も有能な人材を集めれば魔法のような成果が出てくるという考え方がある。実際には魔法のようなことは起きず、嫉妬や陰口、妨害行為がまん延する場合が多い」と指摘する。

2011年にグロイスバーグ氏らが公表した研究報告は、ウォール街の主要金融会社のリサーチチームで「スター」アナリストが一定数を超えるとパフォーマンスが損なわれると結論付けた。組織マネジメントの研究者メレディス・ベルビン氏は1970年代の段階で、全員が高いIQを持つチームは議論が長くなりがちで、協調性に乏しく意思決定が難航すると分析していた。

スターチームのマネジメント法

ミシガン大学ロススクールオブビジネスのリンドレッド・グリア教授は「競泳レーンが明確なら互いを脅威と見なさない」との見解を示す。同じようなバックグラウンドや能力を持つメンバーが複数いても、仕切られている限り問題はないという。

もう一つのポイントは、重要な問題について誰が意思決定権を持つのかあらかじめ決めておくことだ。権限争いはチームを破壊しかねない。

メンバー間の信頼関係を深め、率直なコミュニケーションや共通の目的意識を醸成することも重要だ。グロイスバーグ氏によると、多くのリーダーはそのために必要な時間を費やそうとしないという。

メタは人材の引き抜きで2億ドル(約294億円)を上回る報酬パッケージを提示したと伝えられたが、不満がすぐ表面化しなくても、次回の報酬サイクルでそうならないわけではないとグロイスバーグ氏は警告する。

メタの広報担当者は「MSLへの関心は高く、それぞれ意見があるようだ。われわれは人工超知能の開発にひたすら力を注いでいる」と回答した。

原題:Meta’s AI Dream Team Will Be Management Challenge of the Century(抜粋)

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