(ブルームバーグ):インターネット口座の乗っ取り問題を受け、証券業界が加害者口座の特定に乗り出す方針であることが分かった。
非公開情報だとして匿名を条件に語った複数の関係者によると、日本証券業協会は内部組織のインターネット証券評議会で、口座乗っ取り後の売買で不正に利益を上げている口座特定の可否や、特定した場合の対処方法について検討を始める方向で調整している。東京証券取引所と警察など捜査当局の担当者を招き、この問題への対応について意見交換することも検討している。
関係者によれば、想定される加害者口座としては、他人の口座を乗っ取り特定銘柄の価格をつり上げた後、自分の口座にあらかじめ保有していた同一銘柄を売却して利益を確定する行為が認められるかなどが焦点になるという。
口座乗っ取りによる不正取引についての議論は、これまで利用者の保護強化と被害者への補償に焦点が当たってきた。不正取引を行う側の対応に動き出すことで、口座乗っ取り被害の抑止力強化につなげたい考えだ。
日証協の広報担当者はコメントを控えるとしている。日本取引所グループの広報担当者は「不正な手段で利益を得ている可能性が認められる口座を特定した場合、当該口座が開設されている証券会社に対し、適正な顧客対応を行うよう要請するなどの対応を行っている」と電子メールでコメントした。また、証券取引等監視委員会をはじめとする関係当局とも連携しているとした。
不正取引は年明けから被害が発覚し、4月には被害件数、金額がピークに達した。日証協や証券会社のセキュリティー対策強化もあり、6月以降は大きく減少したが、それでも7月単月の不正取引金額は460億円あった。金融庁によると1月から7月末までの累計で不正取引の件数は8111件、被害額は6205億円に上っていた。
ネット証券協議会は近く、今事務年度の議題を決定する見込みだと、関係者は述べた。同協議会には野村証券やネット専業のSBI証券など約30社が参加している。
関係者によると、証券会社が加害者の口座を特定する方法や、口座凍結などを含め特定した場合の措置について盛り込むことを検討している。
(日本取引所グループのコメントを追加し更新します)
--取材協力:堀内亮.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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