史上最高値を更新した後も、日本株の上昇期待は続いている。7月の参院選敗北を受け、窮地に追い込まれた自民・公明の連立与党が何らかの形で財政支出を拡大するとの思惑が広がっているためだ。

石破茂首相が続投の意思を示す中でも、市場では自民党総裁選が前倒しで実施されるとの見方が広がりつつある。野党が主張する財政出動に前向きな政権が誕生する可能性があり、国内消費や資産価格を押し上げることへの期待が高まりやすい。

UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメントの小林千紗日本株ストラテジストは、新政権の誕生など「何かが変わるということが日本独自の買い材料として意識される」可能性が高いとの見方を示す。

与党は衆参両院で過半数の議席を失い、政策実現には野党の協力が欠かせなくなった。政治の先行き不透明感は強まったが、日経平均株価は参院選以降7%超上昇し、米S&P500種株価指数など世界の主要指数を上回るパフォーマンスを上げている。日米関税合意や米利下げ期待の高まりに加え、財政期待が寄与している可能性は高い。

自民党は8日の両院議員総会で総裁選の前倒し実施を求める意見が噴出したことから、総裁選管理委員会でその可否を検討することになった。

大和証券の木野内栄治チーフテクニカルアナリスト兼テーマリサーチ担当は、経験則から言って、全国の党員らも投票に加わる「フルスペック」の総裁選の場合は株高になりやすいと指摘する。2021年と24年の総裁選前4週間で見ると、日経平均はいずれの年も3%以上上昇していた。

現時点で石破首相の辞任を断定できる材料はそろっておらず、政権続投を支持する有権者が多いことを示す世論調査もある。

また、UBSの小林氏を含む市場関係者からは、バリュエーション(投資尺度)面で相場は上がり過ぎの域に達しつつあるとの指摘も聞かれている。ブルームバーグのデータによると、東証株価指数(TOPIX)の予想株価収益率(PER)は16倍を超え、過去10年の平均である14.5倍を大きく上回る。

それでも、今後の政局を巡る思惑が日本株の押し上げ要因になる可能性は高い。

ニッセイアセットマネジメントの松波俊哉チーフアナリストは、先行きは混沌(こんとん)としているが、大事なのはどのような政権の枠組みになっても積極財政へのシフトは必至という点だと話す。「参院選で財政出動を求める政党が議席を大きく伸ばした」ことから、「次の総裁が誰であれ、ある程度の財政出動は避けられない」とみている。

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