(ブルームバーグ):ウクライナ国防省と連携している監視プラットフォーム「ディープ・ステート」によると、ロシア軍はウクライナ東部ドネツク州で、ドブロピリャの町へ通じる複数の村周辺のウクライナ防衛線を突破した。ロシアのプーチン大統領は、戦況を優位に進めているとの自信を持って、15日のトランプ米大統領との首脳会談に臨むことになりそうだ。
ディープステートは12日、通信アプリ「テレグラム」で、ロシア軍が陣地を固め、ウクライナ側の防衛の弱点を探りながら、ドブロピリャと戦略的拠点のクラマトルスク市を結ぶ道路への進出を試みていると述べた。
ロシアの優位性は、15日にアラスカで行われるロシアと米国の首脳会談で、停戦と引き換えに大規模な領土譲歩を得ようとするプーチン氏の決意をさらに強める可能性が高い。
プーチン氏は、ウクライナへの全面侵攻が4年目に入った今も、停戦に応じて和平交渉に入るよう求めるトランプ氏やウクライナ、欧州各国首脳からの呼びかけを繰り返し拒否してきた。
ロンドン大学キングス・カレッジの国防研究学科で軍事研究を行うマリナ・ミロン氏は「プーチン氏は対抗勢力よりはるかに強いカードを手にしている。ロシア軍は攻勢にあり、主導権を握っている」と指摘した。
ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は12日、記者団に対し、ドブロピリャ周辺の防衛線を突破したロシア兵は、ごく少数でしかも軽武装であり、ウクライナ側は支配の回復に努めていると述べた。ゼレンスキー氏は、ロシアがアラスカでの首脳会談を前に「ロシアが前進し、ウクライナが劣勢にある」という印象を作り出そうとしていると主張した。
条件
15日の会談を前に、ゼレンスキー氏と欧州の同盟国は13日、トランプ大統領と電話会談を行う。欧州では、トランプ氏が停戦の合意と引き換えに、プーチン氏に過度の譲歩をするとの懸念が高まっている。
トランプ大統領がロシアに戦争終結を迫る一方で、プーチン氏は停戦に応じる条件として、ウクライナ軍が東部のドネツク州とルハンスク州から全面撤退するよう求めている。
事情に詳しい関係者によると、米ロ両国当局者は、現行の戦線に沿って戦争を停止し、ロシアが現在占領している南部ヘルソン州、ザポリージャ州の一部を支配下に残す案についても協議している。
ゼレンスキー氏は、ウクライナはいかなる領土もロシアに譲渡しないと述べた。領土問題は自国の安全保障の保証と切り離せないとし、「ロシアにとって、ドンバスは将来の新たな攻勢のための足掛かりだ」と語った。
米国の戦争研究所によると、ロシアはドブロピリャ方面への進軍を、トランプ氏との首脳会談に先立ち「情報面での条件を整える」ために重点化している可能性がある。同研究所は11日のリポートで、プーチン氏がルハンスク州、ドネツク州、ザポリージャ州、ヘルソン州の掌握を「不可避なものとして、ウクライナと西側諸国に要求を受け入れるよう迫っている」と指摘した。
アラスカで合意に至らなくても、交渉が続く中で米国による二次関税の発動をトランプ氏に先送りさせつつ、攻勢を続ける時間を稼げるなら、それはプーチン氏に利する可能性がある。
ブルームバーグはディープ・ステートの地図データに基づき、ロシア軍が今年、ウクライナ国内で約2400平方キロメートルに相当する、同国領土の約0.4%を占領したと推計している。
原題:Putin Heads to Trump Summit Confident He Is Winning in Ukraine(抜粋)
--取材協力:Daryna Krasnolutska.
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