(ブルームバーグ):財務省が13日に実施した新発5年国債入札は、投資家需要の強弱を反映する応札倍率が2020年以来の低水準になった。日本銀行の利上げ継続や国内政治の先行き不透明感が意識される中、投資家が積極的な購入を控えた。
入札結果によると応札倍率は2.96倍と、過去12カ月平均の3.74倍を下回り、最低落札価格も99円71銭と市場予想99円72銭を下回った。小さいほど好調な入札とされるテール(落札価格の最低と平均の差)は3銭と前回の2銭をやや上回った。
岡三証券の長谷川直也チーフ債券ストラテジストは、5年債入札は無難な範囲内ながら弱めの結果と指摘した。「日銀の追加利上げが意識される中、金利水準の低さが意識された」と述べた。
SMBC日興証券の田未来シニア金利ストラテジストは、入札結果は「やや弱かった」とし、「年内に日銀が利上げを行う可能性を考えると、1%という金利水準はやや足りなかった」と分析する。
入札結果を受けて、長期国債先物市場では売り優勢の展開となり、中心限月9月物は水準を下げた。5年国債利回りは一時3ベーシスポイント(bp)高い1.07%に上昇幅を拡大した。
日銀は7月30、31日の金融政策決定会合後に公表した経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、日米の貿易交渉合意を受けて経済・物価を巡る不確実性の表現を和らげ、追加利上げに向けて一歩前進したことを示した。
日本では利上げ期待が強まっており、5年スワップ金利は同期間の債券利回りと比べて上昇している。そのスプレッドは8月1日の直近最低の13bpから半分に縮小している。これはスワップを利用して潜在的な日銀政策引き締めに対して債券保有をヘッジしようとしている投資家にとってコストが高くなっていることを示唆している。
国内政治を巡る不透明感は根強い。石破茂首相は続投の方針を変えていないが、参院選総括や自民党総裁選の前倒し観測を踏まえて退陣論が強まると拡張的な財政政策への警戒感が高まりかねない。
一方、岡三証の長谷川氏は、前回までの入札と違い今回は日米の関税協議が合意に至っている状況であり、「政治面の不透明感がクリアになれば日銀追加利上げへの警戒感が高まる」との見方を示した。
(市場関係者のコメントを追加し、相場動向を更新します)
--取材協力:日高正裕、近藤雅岐.
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.