(今後の予想)
今回の展望レポートで、不確実性に関する評価が緩和され、物価見通し及びそのリスクバランスが引き上げられたことは、米国と主要国(日本を含む)との関税協議合意を受けて、日銀内における先行きの物価目標達成に向けた見方がやや前向きになったことを示していると推測される。
しかし、植田総裁の会見内容は総じて早期の利上げに慎重な印象を受けた。日銀執行部としては、関税の影響が顕在化するのはこれからであるため、次の利上げはその内容を慎重に見定めてからとの認識を持っているということなのだろう。
次回の利上げに踏み切るための主な条件としては、(1)トランプ関税の影響がある程度判明すること、そのうえで、(2)賃金と物価の好循環が継続して物価目標達成の確度が高まったと言えること、の2点が挙げられると考えている。
従って、筆者の中心的な予想としては、今後トランプ関税の行方と影響の見極めにしばらく時間を取った後、今年12月に0.75%へ利上げすると見込んでいる。
この時期になれば、(1)トランプ関税を受けた企業の中間決算や冬の賞与が大崩れしていないこと、(2)今春闘での高い賃上げがサービス等の価格に一定程度転嫁されたこと、(3)来春闘に向けて賃上げ機運が大きく損なわれていないこと、の確認が可能になると考えられるためだ。
ただし、リスクシナリオとして、関税の内外経済への悪影響が想定よりも大きくなった場合には、影響が緩和したと判明するまでは利上げに動けなくなりそうだ。
逆に、関税の影響が限定されるなかで食品価格の上昇率が高止まりし、基調的な物価上昇率への波及が懸念される状況となったり、円安が急速に進む事態になったりすれば、10月への利上げ前倒しもあり得る。