(ブルームバーグ):米国の日本の輸入車に対する追加関税は現行の25%から12.5%へ引き下げられ、同国で事業展開する日系自動車メーカーにとっては大きな朗報となった。きょうから本格化する主要各社の第1四半期(4-6月期)決算発表では、関税引き下げによる業績への影響が注目を集めそうだ。
「最悪の状況は避けられた」。約3カ月に及んだ日米関税交渉が先週、急転直下で決着し、日本の自動車業界からは安堵(あんど)の声が上がる。
ゴールドマン・サックス証券の湯沢康太アナリストらの試算では、関税引き下げでトヨタ自動車やホンダなど主要7社の営業利益に対するマイナス影響は従来の計3兆4700億円から1兆8912億円に縮小する見通しだ。SMBC日興証券の牧一統シニアアナリストも日産自動車を除く6社の営業利益への合計影響額が半減すると見込む。

関税引き下げは、経営再建の途上にある日産や米国での輸入比率が高いマツダなどへの影響を懸念してきた投資家にとっては一定の安心材料となる。販売低迷に苦しむ日産は関税影響を除いても今期(2026年3月期)の営業損益はトントンと見込む。同社は5月時点で今期の関税影響は最大4500億円になるとの見通しを示していた。
マツダは5月の決算発表で今期業績予想の公表を見送ったものの、関税影響は4月単月で90-100億円程度あったと明らかにしていた。マツダは米国市場への依存率と日本からの輸入比率が高いことから、影響額が前期の営業利益1861億円を大幅に上回るとの見立てもあった。
懸念がすべて解消された訳ではない。日本の主要自動車メーカーの中で関税交渉決着後に初めて決算発表して三菱自動車は「関税が事業に与える影響は多岐にわたり、一概に楽観視できる状況ではない」などとして業績見通しはいったん据え置くとした。
値上げや原価低減、生産移管といった関税影響の緩和に向けた取り組みの動向も焦点だ。米国関税の発動以降、日系自動車メーカーはSUBARU(スバル)を除き大幅な値上げを行っていない。
ゴールドマン・サックスの湯沢氏らはリポートで、「関税によるマイナス影響は米国車両販売価格への値上げにより一定程度軽減することができると考えている」との見方を示している。
日米合意を巡っては米国の産業界が反発しているほか、合意内容の全ては明らかになっておらず、リスクも残る。
英調査会社ペラム・スミザーズ・アソシエイツのアナリスト、ジュリー・ブート氏はリポートで、米国から日本への自動車輸出が大幅に増加しない場合、トランプ氏が不満を示す可能性もあるなどとして、「不確実性のレベルは依然として高い」と述べた。
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