米国では富裕層の支出が個人消費全体に占める割合が拡大を続けている。雇用の伸びが鈍り、他の所得層の慎重姿勢で景気減速懸念が強まる中、経済の強さに偏りが目立ってきた。

ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏の分析によると、所得分布上位10%の消費者による支出は4-6月(第2四半期)に消費全体の49.2%を占めた。1-3月(第1四半期)の48.5%から上昇し、1989年以降で最高水準となった。

 

こうした状況は、雇用の大幅な減速、債務返済の延滞増加、多くの世帯を圧迫する根強いインフレといった逆風下でも、米経済が持ちこたえてきた背景を物語る。先週公表された雇用統計の年次改定では、今年3月までの1年間の雇用増加が従来発表の半分程度に下方修正された。

一部のエコノミストは、米経済の屋台骨である消費の重心が富裕層に偏り続けている傾向に警戒を強めている。他のリスクが高まるなか、景気拡大の持続性を揺るがしかねないとの見方だ。

ザンディ氏は「米経済の行方は富裕層の資産と消費に結びついている」と指摘。「彼らが何らかの理由で支出に慎重になれば、経済はリセッション(景気後退)に陥るだろう」と述べた。

その引き金の一つとして、同氏は株価下落を挙げた。株式市場は過去最高値圏にあり、不動産価格も高止まりしている。富裕層の純資産は増加しており、こうした資産効果が消費意欲を下支えしている。

一方で雇用の悪化で労働市場が分岐点に近づき、一段の悪化に向かうとの懸念が市場では広がっている。16-17日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)会合では0.25ポイントの利下げが確実視されている。

原題:Top 10% of Earners Drive a Growing Share of US Consumer Spending(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.