(ブルームバーグ):歯をむき出しにした笑顔が特徴の小さな怪獣「ラブブ」フィギュアが、世界中でブームとなっている。歌手リアーナさんやテニスの大坂なおみ選手をはじめ、何百万人もの消費者のバッグを飾っている。
中でも特に人気なのが、どの種類が出るかわからない「ブラインドボックス」形式で販売されるバッグチャームだ。ファンはレアモデルを探し出し、全種類を集めようと夢中になる。これが世界的な販売拡大を後押ししている。コレクターズアイテムとして、転売市場で数千ドルで取引されているフィギュアもある。
製造元である中国の玩具メーカー、泡泡瑪特国際集団(ポップマート・インターナショナル・グループ)は、大成功を収めている。2025年上半期の売上高は204%増を記録し、ワン・ニン創業者兼最高経営責任者(CEO)は、中国の富豪ランキング入りを果たした。
ただ、その熱狂の持続性には疑問の声も出始め、ほころびも見えつつある。
ラブブとは?
ラブブは、香港生まれのイラストレーター兼トイデザイナーであるカシン・ルン氏による書籍シリーズ「ザ・モンスターズ・トリロジー」に登場する魔法のキャラクターを基にしている。
ウサギのような長い耳と、大きく表情豊かな目、その上の鋭い眉が特徴だ。こめかみまで伸びるほど大きな口には9本の鋭い歯が並び、いたずらっぽい笑みを浮かべている。
各ラブブは特定のスタイルやテーマを表現するシリーズとして発売されている。例えば、キャンディーカラーの「エキサイティング・マカロン」シリーズ(2023年)、座ったポーズの「ハブ・ア・シート」シリーズ(2024年)などだ。
シンガポール限定の「ハイド・アンド・シーク」シリーズなど国ごとの限定版ラブブや、他ブランドとのコラボフィギュアも展開されている。
サイズや形式はさまざまだが、世界的なブームとなっているのはビニール製の顔を持つバッグチャームだ。ブラインドボックス形式で販売され、高さ約15-17センチで、バッグや財布、ベルトに取り付けられる金属リングが付いている。各シリーズには6種類のバッグチャームフィギュアがあり、さらに入手が特に難しい特別版も用意されている。
いつから人気なのか?

ポップマートは2018年、ルン氏とライセンス契約を結び、ラブブの玩具を販売し始めたが、当初は数年間にわたり、比較的ニッチな存在だった。
状況が変わったのは2024年4月のことだ。世界的に人気のK-POP女性4人組グループ「BLACKPINK(ブラックピンク)」のリサさんが、インスタグラムで複数のラブブ人形を披露した。リサさんはその後も、サイズやスタイルの違うラブブを持っている姿をたびたび目撃されている。自分たちも手に入れようとファンの関心が一気に高まり、世界的な需要の急増につながった。
今年は、世界的なポップスターであるリアーナさんがルイ・ヴィトンのバッグにピンクのラブブをぶら下げている姿を目撃され、さらに熱狂が高まった。歌手のデュア・リパさん、モデルのキム・カーダシアンさんなども、ラブブを持つ姿を見せている。
人気の背景にあるのは?
世界的なブームとなった理由の1つは、ブラインドボックスだ。箱を開けるまでどのラブブが入っているかわからず、欲しいタイプでなかった場合には繰り返し購入する動機につながる。この仕組みに加え、ポップマートは各シリーズにレア版を投入し、コレクターの競争心と緊迫感を煽っている。レア版が当たる確率は通常72分の1という。
希少性も熱狂を後押ししている。ポップマートのワン氏は7月、中国メディアに対し、人形の一部に施された手縫い加工のため、生産が遅いと語った。同社は需要に追いつくため、工場の生産能力を増強している。また、新しいバージョンを次々と投入し、話題性を維持している。
ラブブの値段は?
価格はシリーズやサイズ、購入国によって大きく異なる。中国では、バッグチャーム型のラブブは1体99元(約2000円)が標準的な小売価格で、新たに発売された最小サイズのぬいぐるみ版は79元で販売されている。概して中国国外の方が高価だ。米国ではバッグチャームが27.99ドル(約4100円)と、中国のほぼ2倍だ。

転売市場では価格が急騰することもあり、レア版ではその傾向が顕著だ。ブームのピークだった6月には、中国の取引プラットフォームでバッグチャームが正規小売価格の最大3倍で売買されていた。「ビッグ・イントゥ・エナジー」シリーズのレア版トイは、同月に正規小売価格の45倍で取引された。
限定コラボ商品は、さらに驚くような高値を付けている。フォーブスによると、38センチの「ラブブ×バンズ・オールドスクール・モンスターズ・フォーエバー」フィギュアは、7月にイーベイで1万585ドルで落札された。2023年12月の発売時は1体599元だったものだ。
ポップマートはラブブ人気でどんな恩恵を受けたのか?
ポップマートの収益は2025年上半期に139億元に急増し、2020年通年の収益の5倍以上となった。収益の多くは海外販売によるもので、440%の増加を記録した。同社は、現在の140店舗に加え、年末までに中国国外で新たに60店舗を開設し、世界展開を加速させる方針だ。

ラブブ人気はワン氏個人にも恩恵をもたらしている。同氏の資産は現在214億ドルに達し、今年だけで180%増加した。ブルームバーグ・ビリオネア指数によると、同氏は40歳未満では世界で4番目の富豪となっている。
ラブブ人気は持続可能?
8月に発売された新しいミニ・ラブブシリーズはすぐに完売したが、中古市場での需要が弱いことから、アナリストや投資家の間で懸念が高まっている。JPモルガンのアナリストは14日、評価の過熱と将来の成長を促す材料の不足を理由に、ポップマートの見通しにリスクがあると指摘した。この評価を受けてポップマートの株価は急落し、8月26日に過去最高値を付けてから3週間で、その価値のおよそ4分の1が失われた。

ゴールドマン・サックス・グループはリポートで、一般的に、玩具ブームの寿命は2-3年程度だと指摘しつつ、新シリーズを継続的に投入することで人気の継続はできるとしている。
ラブブをめぐる熱狂は、1990年代の米国で起きた「ビーニー・ベイビー」ブームと比較されている。当時、このぬいぐるみの転売価格は急騰したが、約4年で下火になった。ただし、マテルのバービー人形の一部やトップスの限定野球カード、特定のスター・ウォーズのフィギュアのように、より長期にわたり人気を維持しているコレクターズアイテムもある。
原題:What’s the Labubu Craze All About? Can It Last?: QuickTake(抜粋)
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