Q. 80兆円対米投資の概要は?
A. 日米両政府の見解が大きく異なっている。
23日にホワイトハウスが公表したファクトシートでは「米国の指示の下、日本が5,500億ドル(約80兆円)を投資する。
対象は戦略的産業基盤であるエネルギー、半導体、重要鉱物、医薬品、商用・防衛造船など」「投資収益の90%は米国に帰属し、米国の労働者・納税者・地域コミュニティが利益の圧倒的部分を享受する」と指摘している。
一方、日本政府の発表、及び交渉担当であった赤沢経済再生担当大臣の発言に基づくと、「5,500億ドルは政府系金融機関の出資・融資・融資保証の枠(投資の最大額)」「利益配分が1対9になるのは、このうち出資に限定される」「利益配分は出資割合等に基づき、民間企業が決める」「出資は5,500億ドルの1~2%であり、(利益配分が1対9で)失ったのはぜいぜい数百億円の下の方。
(関税引き下げで)回避できた損失は10兆円」と指摘している。なお、80兆円の大半が融資・融資保証である場合、実際の財政負担はこのうち回収が滞った分に限られる。
トランプ政権は2025年2月に政府系ファンドの成立に向けた大統領令を発令している(同大統領令は90日以内に計画を策定するとしたものの、7月時点で詳細は未公表)。
こうした政府系ファンドの設立が具体化する場合、対米投資を約束している日本やEUが何らかの資金提供を行う可能性がある。
とはいえ、政府系ファンドの資金調達の大半を外国政府に依存するのは現実的とは思い難い。
仮に米国が巨額の資金提供を日本側に強硬に要求する場合、日本政府がこうした多額の財政負担を受け入れる可能性は低く、日米貿易合意は白紙に戻るだろう。
