サッカークラブのオーナーになるという夢を追いかけ、巨額を失った富豪は多い。しかし米アリゾナ州の消防士や刑務官らによる年金基金は、その例外となりそうだ。

アリゾナ州公共安全職員退職年金制度(PSPRS)は4年前に、英国イングランドのサッカークラブ、イプスウィッチ・タウンFCに出資した。事情を知る複数の関係者によると、今では権益の売却で交渉しており、多額の売却益が見込まれる。

米実業家ブレット・ジョンソン氏はPSPRSの持ち分を含む株式追加取得のため、最大2億1400万ポンド(約420億円)の調達に取り組んでいる。同氏はこの取引でクラブの企業価値を3億7500万ポンドと評価しており、2021年の買収額4000万ポンドを大きく上回る。

ジョンソン氏は米投資会社ベネボレント・キャピタルの最高経営責任者(CEO)。米サッカークラブのフェニックス・ライジングFCとロードアイランドFCにも関与している。イプスウィッチの過半数株式は米社ゲームチェンジャー20が保有。PSPRSはオハイオ州の投資ファンドORGを通じて、このゲームチェンジャー20の主要株主となっている。

関係者によれば、交渉は継続中でまとまらない可能性もある。イプスウィッチとORG、ゲームチェンジャー、PSPRSの担当者はコメントを控えた。ジョンソン氏に電子メールでコメントを求めたが、返信はない。

ゲームチェンジャー20は昨年、イプスウィッチの株式40%をマーク・ラスリー氏のアベニュー・スポーツ・ファンドに売却したが、クラブの支配権は保持した。歌手のエド・シーランさんも少数株主の一人だ。クラブとPSPRSは緊密な関係を維持している。基金を代表するジェイソン・シェクタリー氏は、勤務中に重度のやけどを負ったことがある元警察官。たびたびホームスタジアムを訪れてスピーチを行い、選手たちとの交流を続けている。

クラブの再建も進んでおり、ホームスタジアムであるポートマン・ロードは改修され、新しい練習施設も建築中だ。エド・シーランとのスポンサー提携を活用した商業展開も順調だ。

クラブは夏の移籍に伴う収入として約1億ポンドを見込んでおり、すでにリアム・デラップ選手のチェルシー移籍で推定約3000万ポンドを得ている。さらにプレミアリーグ降格に伴う放映権収入の減少に配慮した「パラシュートペイメント(降格補償金)」として、5600万ポンドを受領する見通しだ。

原題:Arizona Pension Fund to Bank Profit After English Football Deal(抜粋)

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