韓国の株式市場が今年、世界の主要市場の中で最も好調なパフォーマンスを見せている。バリュエーション(企業価値評価)や少数株主の権利を向上させるための大胆なコーポレートガバナンス(企業統治)改革が海外投資家を引き寄せている。

韓国では今月、取締役に全ての株主に対する説明責任を負わせる商法の改正案が可決。現在は、取締役選任の投票制度の改善や自社株消却の義務化など次の改革に照準を定めている。いずれも「チェボル(財閥)」と呼ばれる巨大企業グループの影響力を抑制することが目的だ。

こうした中、4月まで9カ月連続で韓国株を売却していた海外の投資ファンドからの資金が戻ってきている。ゴールドマン・サックス・グループやJPモルガン・チェース、シティグループ、モルガン・スタンレーなどのストラテジストは6月以降、韓国株に対する投資判断を引き上げている。

韓国総合株価指数(KOSPI)は今年33%上昇。時価総額は3年ぶりに2兆ドル(295兆円)を突破している。

 

韓国当局は、コーポレートガバナンスの改革によって記録的な株高を実現した日本の成功例を再現しようとしている。先月就任した李在明大統領は企業統治の基準引き上げと株式市場のリターン改善を最優先事項の1つに掲げているため、市場ではいわゆる「コリア・ディスカウント」の解消が進むと期待が広がっている。

海外の投資家からの純資金流入額は7月だけで30億ドルを超え、前の2カ月間の合計額を上回っている。

 

韓国の国会では8月、上場企業の取締役会の多様化を図るための集中投票制度についても採決が行われる予定だ。大株主が指名できる監査委員の人数に上限を設ける案も取り上げる見込み。

自社株

韓国市場の改革では自社株も問題になっている。家族や系列会社に自社株を譲渡することで持ち株の比率を変えることなく支配権を強化することが可能になっている。

今回の商法改正案には直接含まれていないものの、自社株消却の義務化は、KOSPIを5000まで引き上げる目標を掲げている李在明政権の優先課題として残っている。

この案には財閥側が強く反発している。李大統領の上級補佐官で国政企画委員会の委員長を務める李韓柱氏はブルームバーグとの最近のインタビューで、混乱を避けるために段階的に進めるべきだと語っている。

ユジン資産運用のハ・ソックン最高投資責任者(CIO)は、企業側は少なくとも既存の自社株維持を認めるよう求め、今後取得したものについては消却に同意する可能性があると指摘。「そうなれば市場を失望させるだろう」と述べた。

大韓商工会議所が上場企業300社を対象として行った最近の調査によると、約77%が商法のさらなる改正は「事業の成長に悪影響を与える」可能性があると回答している。

 

原題:Global Money Chases World’s Hottest Major Stock Market in Korea(抜粋)

--取材協力:Charlotte Yang.

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