カナダのアリマンタシォン・クシュタールがセブン&アイ・ホールディングスに対する買収提案を撤回した。

両社にそれぞれ助言を提供していた大手金融機関は、巨額の手数料収入を逃すことになった。クシュタールは6兆7700億円での買収を提案していた。

ゴールドマン・サックス・グループは、クシュタールに助言。三菱UFJフィナンシャル・グループを日本でのパートナーとするモルガン・スタンレーは、セブン&アイ側のアドバイザーを務めていた。

野村ホールディングスなど他の複数の金融機関も、この案件に関わっていたか、関わろうとしていた。

M&A(企業の合併・買収)助言を提供する投資銀行には、取引が成立して初めて報酬が支払われるのが一般的だ。

約1年にわたる交渉の末、クシュタールはセブン&アイ買収を断念した。理由として、セブン&アイが「実質的な協議に応じなかった」ことを挙げている。

同案件は実現すれば、外国企業による過去最大規模の日本企業買収となるところだった。

案件に関与した投資銀行は、助言や資金調達関連などの業務から数千万ドル、あるいは数億ドルの報酬を得られる見込みだった。

買収断念の報道を受け、17日の東京市場でセブン&アイの株価は一時9.6%下落した。

セブン&アイは、クシュタールの決定に遺憾の意を表明し、引き続き独自の企業価値創出計画に注力し、業務改善に取り組んでいく方針を示した。

日本では近年、企業統治の強化や株主還元の向上を背景に、企業やプライベートエクイティー(PE、未公開株)ファンドによるM&Aが急増している。

こうした動きを受け、銀行は日本での存在感を高めようと、優秀なディールメイカーの獲得、チーム増強、専門のファイナンス部門の立ち上げなどに力を入れている。

ブルームバーグの集計によると、今年これまでに日本企業が関与したM&A案件の総額は1370億ドル(約20兆4000億円)に達し、前年同期比で約170%の急増となっている。

投資銀行にとって、日本のような成熟市場は、アジア太平洋地域における収益確保のうえで極めて重要だ。新興国に比べて手数料収入が高くなる傾向があるためだ。

案件の頓挫は、投資銀行以外にも波紋を広げている。ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)のアナリスト、アンドルー・チャン氏は17日のリポートで、セブン&アイの株式2%を保有する三井物産は、買収が成立していれば約10億ドルを手にできた可能性があったと指摘した。

原題:Wall Street Banks Miss Out on Millions as Seven & i Deal Fails(抜粋)

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