(ブルームバーグ):人工知能(AI)を巡る熱狂が、民間のテクノロジー投資において過去最大規模のバブルを生み出した可能性があると、ベンチャーキャピタルAZ-VCの創業者でマネジングパートナーのジャック・セルビー氏が警鐘を鳴らした。スタートアップのバリュエーションが今後修正を迫られると予想している。
セルビー氏はオンライン決済ペイパルの創業に関与したイーロン・マスク氏やピーター・ティール氏らを指すいわゆる「ペイパルマフィア」の一人。
セルビー氏はシンガポールで開かれた「スーパーリターン・カンファレンス」でブルームバーグテレビビジョンのインタビューに応じ、消費者は「現在、実際にかかるコストよりもずっと低い金額」でAIサービスを利用していると指摘。「いずれは原価に加え、おそらく利益を一部乗せた価格設定にせざるを得ない。その時はまだ訪れていないが、間もなくやって来る」と語った。
世界では次世代の変革的なAI製品を生み出そうとする企業に数十億ドル規模のベンチャー資金が流れ込んでいる。しかしセルビー氏のような投資家は、収益性が追いついていない中で企業のバリュエーションが過度に押し上げられていると警告している。
同氏は約25年前のドットコム・バブル崩壊を引き合いに出し、AIバブルがはじければ、世界中に乱立している、大小さまざまなAI企業の多くが生き残れないと強調。「投資家の資金は数千億ドルとはいかないまでも数百億ドル単位で文字通り灰になる」と述べた。

長年にわたりティール氏のファミリーオフィスでマネジングディレクターも務めるセルビー氏は、AI投資に痛みが伴う可能性を指摘するテクノロジー業界関係者の一人。企業のバリュエーションが膨らむ一方で、収益化への取り組みがまだ具体化していないとの見方が背景だ。
対話型人工知能(AI)「ChatGPT」を手がける米OpenAIのサム・アルトマン最高経営責任者(CEO)も先月、AI投資ブームとドットコム・バブルとの類似点を指摘している。
また、マサチューセッツ工科大学(MIT)は、企業における生成AIプロジェクトの95%が利益を生まなかったとのリポートを公表している。
セルビー氏は「AIという木々が全て空に届くかのような熱狂的なストーリーが飛び交っている。初期に参入したのなら素晴らしいが、今から参入する場合は確信が持てない」とコメントした。
原題:AI Euphoria Could Be Biggest Bubble Yet, Tech Veteran Selby Says(抜粋)
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