(ブルームバーグ):みずほフィナンシャルグループ(FG)は9日、人工知能(AI)与信の技術を活用してスタートアップ向けに融資する143億円のファンドを設立したと発表した。2023年11月に続く第2号ファンドとなる。
海外ではファンドが企業に直接融資するプライベートクレジット市場が拡大する一方、市場環境や銀行の融資行動の違いを背景に、国内市場はまだ発展途上にある。ただ足元では、銀行が大規模に融資に踏み出してこなかった新興企業向けの分野で広がりを見せ始めた。
みずほのファンドはスタートアップに資金を提供するのが目的だ。今回は、みずほ銀行のほか、地銀勢から京都キャピタルパートナーズ、山陰合同銀行、名古屋銀行、広島銀行、福岡銀行が入った。富国生命保険、三井住友信託銀行も参画した。
すでに共同でファンドを運営する法人間決済サービスのUPSIDERホールディングスがAI与信の技術を提供する。特に成長段階にあるスタートアップが融資対象で、AI技術の活用により最短1週間で可否を判断し、最大10億円を融資する。
みずほ銀の金田真人執行役員は同日の記者会見で「スタートアップの数は増えていて成長意欲もある。みずほのバランスシートだけでやっても限界がある」と語った。
1号ファンドはみずほFGとアップサイダーが23年秋に設立。今回新たに7社が加わり、出資総額は243億円となった。25年5月末時点で130億円の貸し付け実績がある。みずほはプライベートクレジット分野での事業を拡大しており、傘下のみずほ銀が24年10月、米資産運用会社のゴラブ・キャピタルと業務提携した。
海外では大きな資金の出し手に
米国を中心とした海外では、プライベートクレジットファンドが中堅・中小企業の資金繰りの担い手として存在感を示している。最近では保険会社など日本の機関投資家が、海外のファンドに出資する例も増えてきている。
米国ではリーマンショック後、当局による規制強化もあり、銀行は企業への融資を抑制した。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは昨年5月のレポートで、こうした環境下で「企業に必要な資金を提供し、経済成長に大きく貢献してきた」と評価した。
リスクへの警戒を促す指摘も出ている。国際通貨基金(IMF)によれば、プライベートクレジット市場は23年に世界で2兆1000億ドル(約308兆円)に達した。対象となる企業の規模が小さく負債も多い傾向にあるため、金利上昇や景気後退などの影響を受けやすいといった脆弱性を指摘している。
「メインバンク」
国内でプライベートクレジット市場が、まだ大きく育っていない背景には、市場環境と邦銀の特性がある。「メインバンク」という言葉が代表するように、邦銀は綿密な取引先との関係構築を強みとし、現在でも国内企業向け融資の世界では大きな存在感を放っている。
日本銀行も24年4月の調査で、背景について「国内銀行による融資が支配的である」などと記している。欧米と比べて貸出金利が低いことから、プライベートクレジットファンドが参入しても期待するリターンに見合わないことも一因だ。
今回、みずほとアップサイダーが拡大したプライベートクレジットファンドは、スタートアップに特化している点で欧米市場とは様相が異なる。審査の難しさなどから邦銀が敬遠してきた分野だけに、資金需要は大きい。スタートアップ向け以外にも広がりを見せるかに関心が集まりそうだ。
(プライベートクレジット市場の状況や背景を追加して更新します)
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