(ブルームバーグ):シンガポールで高級品の消費が堅調に推移している。中国や米国を含め世界的な販売不振に悩む高級ブランドにとっては救いだ。
市場調査会社ユーロモニター・インターナショナルがブルームバーグに提供したデータによると、今年のシンガポール高級品売上高は前年比7%増の139億シンガポールドル(約1兆5800億円)と、日本や中国、韓国といった域内の主要なショッピング拠点を上回ると見込まれる。

ユーロモニターが分析対象としたアジア市場で、シンガポールが2024年に記録した伸び率は日本を除く全ての国・地域を上回った。来年には新型コロナウイルス禍前の19年に達したピーク(147億シンガポールドル)に並ぶと予想される。
シンガポールの面積は280平方マイル(約725平方キロメートル)で、ニューヨーク市よりも小さく、人口も約600万人と東京や上海などのアジアの大都市に比べると少ない。
それでも、中国本土を除くアジア太平洋地域32都市の中で、24年の高級ブランド新店舗開設数に占める割合はシンガポールが3番目に大きかった。ブルームバーグが商業不動産会社サヴィルズから提供を受けたデータが示した。

中国経済の減速で冷え込む高級品市場で、シンガポールは数少ない好調な市場となっている。長年にわたる富裕層優遇策が資産家を引き寄せ、金融業界の発達を促したことで、シンガポールは世界有数の裕福な国となった。
その強みは、政治の安定と国内の所得水準上昇でさらに補強されている。シンガポールでは100万米ドル(約1億4500万円)以上の資産を持つミリオネアは24万人を超えたとされ、世帯の給与所得(中央値)は5年連続で増加している。
24年1-9月期の観光客による小売り支出は中国や米国に加え、インドネシアやインドなどからの入国者がけん引する形で前年同期比5%増の39億シンガポールドルとなった。シンガポールは東南アジア市場をターゲットに据える高級ブランドにとって、安全な避難先であると同時に、戦略的な玄関口でもある。
RTGグループ・アジアの共同創業者で最高経営責任者(CEO)のアンヘリート・ペレス・タン氏は、海外からシンガポールに流入する富裕層と、西洋とアジア双方の美意識に精通した顧客層に魅力を感じたブランドが、リテール戦略を試す「管理された発射台」として同国を利用し始めていると分析。
「単なる話題づくりではなく、ブランドに対する消費者の感情的な反応を試す戦略的なソフトな発射台」だとみているのだという。

原題:Singapore’s 240,000 Millionaires Spur Spending on Luxury Brands(抜粋)
--取材協力:Shirley Zhao.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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