増税・借り入れに高いハードル 悩ましい財源問題
2025年6月、レイチェル・リーヴス財務大臣は国防費の増額を公約しました。
2027年4月までに、情報機関を含む国防費はGDPの2.6%に引き上げられます。政府はこれを海外援助の削減によって補うと発表しました。
NATOのマルク・ルッテ事務総長が国防費の目標をGDPの5%に引き上げると宣言している今、ここにイギリスのジレンマがあります。
目標通り5%に引き上げるとなると、2030年までに国防費として870億ポンドを追加で支出することになります。
これはイギリスの教育予算とほぼ同じ額であり、医療と福祉予算の半分弱に相当する巨額です。
ブルームバーグ・エコノミクスは、国防費をGDPの5%に引き上げた場合、2032年までに政府債務が3500億ポンド増加すると推定しています。
スターマー首相は公約で所得税、VAT(付加価値税)、法人税、保険料の引き上げはしないと明言しており、これらはイギリスの税収の大部分を占めています。
つまり、増税という選択肢は現実的ではありません。
もう一つの選択肢は借り入れですが、イギリスは既存債務の利息の支払いだけで年間1000億ポンドを要しています。
すでに金利が高い中で債務を増やせば、債券市場との「戦争」を招くことになりかねません。
政府がその巨額な規模で借金を増やせるとは思えません。
世論調査によれば、国防費は医療、移民、経済の問題に比べて、イギリス国民の関心が低いというのが現状です。
