軍需産業への投資に求められる政府のコミットメント
もう一つの選択肢、あるいは“希望”と呼べるかもしれません。
それは、長期的な経済成長を狙って、国防費で国内の軍需産業に投資するというものです。
成功の可能性を最も高めるには、国防費を国内への投資に集中させることでしょう。
アメリカから航空機や航空母艦を輸入しても、イギリス経済にとって直接的なプラスにはなりません。
国防費が研究開発に回る場合は、経済も恩恵を受けるというデータもあります。
これはイギリスの生産性を向上させ、同じ労働量でより多くの価値を生み出す可能性を秘めています。
例えば、弾薬や小型武器ではなく、自律型ドローンを生産したほうが経済的なメリットは大きいのです。
しかし、現在、研究開発はイギリスの国防予算のごく一部にすぎません。
経済に大きな影響を与えるには、研究開発費を大幅に増やす必要があります。
軍需産業への発注が増えれば、雇用が生まれ、労働者の消費が増えれば、結果として政府の税収も増えるという好循環が生まれる可能性もあります。
ただ、軍需産業の成長には時間がかかり、政府からの確固たるコミットメントが不可欠です。
イングランド北部にある国防省の主要防衛関連企業BAEシステムズの弾薬工場を視察した際も、同社は以前の契約に基づいて生産能力を増強しているものの、さらなる確約を求めていました。
例えば、20年分の発注が保証されれば、軍需産業は砲弾の生産ラインを新設するでしょうが、3年分の発注しか得られないと思えば、そうはしません。
軍需産業が動くには、需要の把握と、イギリス政府や同盟国からの長期的な契約が欠かせないのです。
それが、軍需産業が長年求めてきた「確実性」に他なりません。
