冷戦終結後、最大の国防費増額に踏み切ろうとしているイギリス。しかし、その足元は決して盤石ではありません。長年にわたる国防費削減のツケは大きく、陸軍の戦闘能力は著しく低下し、軍の規模はナポレオン時代以降で最も小さくなっています。ロシアの脅威は増す中で、財政的な余裕も、時間をかけた貯蓄もできないイギリス政府は、まさに難しい選択を迫られています。

「誇り高き大英帝国」の軍事力

安全保障の専門家は、イギリスには弾道ミサイルから自国を守る力がないと指摘しています。

かつて世界に名を馳せたイギリス軍の評価は、過去20年間で徐々に低下してきました。

象徴的な出来事としては、2009年のイラク戦争でアメリカ軍がイラク軍と共にイギリス軍を救出しなければならなかったこと、そしてアフガニスタンでも同様の事態が生じたことが挙げられます。

この問題の根源には、兵員の数不足が深く関係しています。

2010年に労働党政権が退任した際、陸軍の兵員は約10万人でしたが、この時点で既に減少傾向にありました。

さらに、2010年と2011年の国家安全保障戦略の見直しにより、さらなる兵員削減が決定され、その数は激減しました。

現在、目標とする兵力は7万2500人であるにもかかわらず、実際に動かせるのは約5万5000人に留まっています。

作戦経験のある訓練済みの兵員が流出するのを防ぐことは極めて重要であり、劣悪な宿舎環境が兵士の早期退職を招いていることは政府にとって大きな痛手です。
しかし、兵員不足は問題の一部に過ぎません。

2025年6月に政府が発表した最新の戦略的防衛見直しでは、戦闘力回復のための計画が示されました。

これには、弾薬備蓄の不足や非効率で時代遅れの調達システムの改善が含まれます。

イギリスは対潜水艦戦能力や長距離攻撃能力など、最新鋭の機材を保有しているものの、その数が圧倒的に不足しています。

機材が不足しているということは、兵士が十分に訓練できないことを意味します。

兵員、戦車、そして訓練の減少は、歴代の保守党政府による投資不足の結果だと言えるでしょう。

イギリスはG7の一員であり、世界で最も裕福な国の一つであるにもかかわらず、なぜこのような状況に陥っているのでしょうか。