百貨店株のパフォーマンスが低調だ。米国の関税政策による世界的な景気懸念や為替の円高を背景に、訪日外国人客(インバウンド)による高額消費の減速が懸念されている。

4-6月期の騰落率は東証株価指数(TOPIX)の7.3%高に対し、百貨店株はエイチ・ツー・オーリテイリング株が16%安、高島屋株が6.7%安、松屋が4.8%安など大きくアンダーパフォームした。

H2Oリテは5月発表の今期(2026年3月期)営業利益計画が市場予想を下回り、高島屋はインバウンド売上高の鈍化などを理由に通期の営業利益計画を下方修正した。日本百貨店協会によると、全国87店舗の百貨店における5月の免税総売り上げは前年同月と比べ41%減った。

セゾン投信の瀬下哲雄マルチマネジャー運用部長は、為替が円高気味になったため、訪日客にとってお得感がなくなり、関連銘柄に「ダイレクトに効いてくるようだ」と指摘。景気不安もあり、訪日客は高額な買い物を控えやすいとみている。

TOPIXは24年7月に付けた終値ベースの最高値まであと3.6%だ。インバウンド消費の減速がさらに鮮明になると内需関連銘柄の足かせとなり、指数が最高値を更新する妨げになりかねない。

短期的には、漫画家の地震予言をきっかけとしたアジアからの訪日旅行の減少も重しだ。専門家らは予言について科学的根拠がないと指摘するが、ブルームバーグ・インテリジェンスの分析では台湾、韓国、香港からの航空便予約は4月以降減少し、特に香港からの週次予約数(4月-5月12日の間)は平均で前年から半減した。

観光庁によると、これら3地域からの旅行客の消費額は24年に全体の約3分の1を占め、減少が続くと高額品販売の逆風となる。長期的には、消費税免税の廃止や出国税の引き上げなど訪日客に対する課税強化論が政府・自民党内で浮上していると日本経済新聞が6月に報じたことも悪材料として警戒されている。

最近の株価下落で投資指標から見た割安感が増していることは、百貨店株を下支えする可能性はある。H2Oリテや高島屋は株価純資産倍率(PBR)が1倍を下回り、資本効率の改善に向け経営陣が株主還元を強化するとの期待が高まりやすい状況だ。

とはいえ、富裕層の高額消費には既に陰りが見え始め、百貨店株に投資資金が戻らない展開を警戒する市場参加者も少なくない。高島屋の美術・宝飾品・貴金属の売上高は2月以降、4カ月連続で前年同月比マイナスが続いている。

りそなホールディングスの武居大暉ストラテジストは「百貨店の利益成長率が鈍化していくにつれて、同じ小売りの中でもディスカウントストアなどに資金が流れていく可能性がある」を指摘した。

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.