長期国債は、株式のように短期間で劇的な価格変動を見せることは少なく、その安定性から「安全な投資先」として認識されてきました。しかし、そのイメージとは裏腹に、世界の長期債券市場は今、かつてないほどの不確実性に揺れ動いています。特に、これまで最も安全な避難場所とされてきた米国債にさえ、異変の兆候が見られています。

劇的に売られる超長期債 背景に財政不安

債券には価格と利回りという二つの重要な要素があり、これらは常に逆方向に動くという特性を持っています。

金利が上昇すれば債券の価格は下落し、結果として利回りは高くなります。

これは、政府が資金を借り入れる際のコストを示す重要な指標でもあります。

近年、世界経済を取り巻く不確実性の高まりが、この穏やかな債券市場に波乱を巻き起こしています。

貿易戦争や各国政府の財政出動、特に米国のトランプ政権が打ち出した大型減税法案は、巨額の財政赤字を生み出すと予測され、債務問題への懸念が深まりました。

議会予算局の試算では、今後10年間で22兆ドルもの赤字が追加される可能性が指摘されており、これは楽観的なシナリオでさえ厳しい見通しです。

こうした状況下で、特に償還期限が30年を超えるような超長期債が劇的に売られる現象が起きています。

これは、投資家が長期的な経済見通しや政府の財政健全性に対して不信感を抱いていることの表れと言えるでしょう。

実際、アメリカの30年債の利回りは一時5%を超えて急騰し、2007年以来の最高水準に迫りました。

これは、市場における金融ストレスの初期兆候である可能性も指摘されています。

金利が構造的に高くなるリスクが現実味を帯びており、長期債の発行が財政的に意味をなさなくなるかもしれないという懸念も浮上しています。