韓国は今、世界中の美容医療を求める人々にとっては「聖地」と化している。政府が医療ツーリズムを推進し始めた2009年以来、外国人患者数は着実に増加の一途を辿り、2023年には過去最高の60万人を突破。しかし、この華やかな美容医療の隆盛の裏側には、深刻な問題が横たわっている。訓練を受けていない、あるいは資格不十分な「ゴーストドクター」による被害者が10万人以上も報告されているのだ。
政府目標は2027年までに70万人 過熱する韓国の医療ツーリズム
ソウルの街を歩けば、若返りを求める観光客の姿を目にしない日はない。
ニューヨーク郊外に住む46歳のジュリー・ミラーさんもその一人だ。
「肌をより若く見せたい」という彼女は、韓国のスキンケアに対するトレンドを肌で感じ、レーザーやピーリング、さらには美容整形といった施術に魅了された。
アメリカに比べて費用が手頃であることも、彼女の韓国行きを後押しした大きな要因だった。
ジュリーさんのように、医療ツーリズム代理店の助けを借りて渡韓するケースは少なくない。
代理店は患者のニーズに合わせて最適なクリニックを紹介し、施術プランの提案から通訳、送迎、さらには手術後のサポートまで、手厚いサービスを提供する。
こうした手厚いサポート体制に加え、透明性の高い価格設定や病院レビューのためのオンラインプラットフォームの登場も、外国人患者の増加に拍車をかけている。

特に「カンナムオンニ」のようなプラットフォームは、利用者が施術内容やクリニックの待ち時間、満足度などの経験を比較・検討できるため、海外からの患者にとって非常に有用な情報源となっている。
韓国政府もこの好機を逃すまいと、医療ツーリズムの誘致に力を入れている。
2027年までに70万人という外国人患者の誘致目標を掲げ、税金還付や特別医療ツーリズムビザの発行、グローバルなウェルネスイベントの開催など、あらゆる手段を講じて国を医療ツーリズムの拠点として宣伝してきた。
特にソウルの江南エリアは、政府の戦略的な支援によってこの産業を支える中心地として発展を遂げた。
約43平方キロメートルというニューヨークのマンハッタンとほぼ同じ広さのエリアに、600人以上の美容外科医と1000以上のスキンクリニックが集中しており、関連ビジネスは飛躍的な成長を遂げている。
専門家たちは、韓国の美容皮膚科における激しい競争が、治療の質と水準を著しく向上させていると指摘する。
手頃な費用、アンチエイジングへの関心の高まり、そして顔を変える非侵襲的な施術への嗜好が、顧客を引きつけ続ける主要因となっているのだ。
また、「Kビューティー」の最も特徴的な点は、シワや色素沈着など特定の部位に対する徹底的なケアに見られる「細部へのこだわり」だという。
医師たちは常にイノベーションを追求し、この競争の激しい分野でしのぎを削っている。
