(ブルームバーグ):中国のテクノロジー業界は、国内で過酷な価格競争にさらされているが、同業界内には値下げとは真逆の戦略を取ることで好調な一角がある。オンライン音楽業界だ。
香港上場のテンセント・ミュージック・エンターテインメント・グループと、より小規模なネットイース・クラウド・ミュージックの株価は、2023年末以降に2倍余りに上昇。他の中国インターネット企業の大半を上回るパフォーマンスを見せている。両社ともポッドキャストやライブイベントの提供を強化しながら、忠実なユーザー基盤の収益化に注力してきた。
テンセント・ミュージックは、より高価格なプランへの加入を促すことで、有料ユーザー1人当たりの収入が4四半期連続で増加。電気自動車(EV)や電子商取引など、厳しい値下げ競争で株価が不安定な他の中国テクノロジー銘柄とは対照的だ。
「音楽は中国の若者の生活においてますます重要になっており、1-2元を節約するために全てのプレーリストを捨てて別のプラットフォームに乗り換えるようなことはしない」と、モーニングスターのアナリスト、アイバン・スー氏は指摘。「月額サブスクリプション料金は、コーヒー1杯と同程度で非常に安価だ」と述べた。

中国のオンライン音楽業界はここ数年で再編が進み、テンセント・ホールディングス(騰訊)とネットイース(網易)の傘下企業2社による事実上の2強体制が確立されている。なおスポティファイは中国では利用できない。
業界首位テンセント・ミュージックの月間アクティブユーザー数は3月末時点で約5億5500万人で、そのうち約22%が有料会員。これに対しスポティファイの有料会員比率は約40%だ。
テンセント・ミュージックの収益化戦略の柱の一つは「スーパー・プレミアムVIP」。ユーザーは月額約4ドルで、限定コンテンツやアーティスト関連商品の先行購入、ライブイベントへの早期アクセスなどの特典を受けられる。月額サブスクリプションの基本料金は約2ドル。
リンカーン・コン氏らゴールドマン・サックス・グループのアナリストはリポートで、有料会員に占めるプレミアム会員の割合が今年の12%から27年には19%に拡大すると予測。また、今年の有料ユーザー1人当たりの平均収入は10%増加すると予想し、26年以降も一桁台後半の伸びを見込んでいる。
テンセント・ミュージックの株価収益率は予想1株利益ベースで21倍。過去3年間の平均を上回るものの、スポティファイの約60倍と比べれば依然としてかなり割安だ。ネットイース・クラウド・ミュージックは24倍。
ファイナンシエール・ド・レシキエのアジア株責任者ケビン・ネット氏は、テンセント・ミュージックのバリュエーションは「特にスポティファイと比べると、まだ魅力的に見える」と指摘。「70%超の市場シェアを持つ未成熟市場において、価格引き上げの余地がある点を投資家は評価している」と述べた。
原題:Tencent Music Shares Double on Break From China Price Cut Script(抜粋)
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