(ブルームバーグ):2023年の終わりごろ、ヘッジファンド業界のベテラン、ダニー・ヨン氏は、ある有望なトレーダーの採用に失敗した。問題は報酬でも企業の魅力でもなく、勤務地にあった。
ヨン氏が運営するダイモン・アジア・キャピタルはシンガポールが本拠地だが、そのトレーダーはドバイにオフィスを置くライバル企業に就職した。
ヨン氏は数週間で決断した。優秀な人材が中東に行きたいなら、ダイモンも中東にオフィスを開くべきだと判断。昨年10月にはドバイに新オフィスを開設し、今年末までに10人のポートフォリオマネジャーを配置する計画を進めている。
ダイモンの急速な海外展開は、低税率を誇るシンガポールでさえ、アラブ首長国連邦(UAE)の魅力に押されている状況を示している。
約3兆ドル(約435兆円)規模の政府系ファンド(SFW)や富裕層の存在だけではなく、優秀な人材がヘッジファンドをUAEへと誘い込んでいる。
ドバイとアブダビには個人所得税ゼロ、東西両地域と取引しやすいタイムゾーン、富裕層向けのライフスタイルといった魅力があり、過去2年の地政学的緊張にもかかわらず、多くのトレーダーが勤務を希望している。人材を巡ってしのぎを削るヘッジファンドは、トレーダーらの望みをかなえようとオフィスを開設してきた。
ロンドンを本拠とするタウラ・キャピタル・マネジメントの創業者ディエゴ・メギア氏はドバイについて「人材獲得の要所だ。この環境を提供できないファンドは不利になる」と語る。
事情に詳しい関係者が匿名を条件に述べたところによると、業界大手のミレニアム・マネジメントは1チームが希望したことからドバイ進出を決めた。他のチームもドバイ勤務を望み、現在は約120人、25チームがドバイで働いている。
ドバイ国際金融センター(DIFC)とアブダビ・グローバル・マーケット(ADGM)も、世界中の資産運用業者を誘致すべく積極的に活動している。
ドバイには現在75社以上のヘッジファンドが拠点を設けており、およそ10社だった10年前から大きく増加。アブダビのアル・マルヤ島では、過去1年で金融プロフェッショナルの人員が17%増加している。
原題:Hedge Fund Traders Are Pushing Firms Into Dubai and Abu Dhabi(抜粋)
--取材協力:Nandu Nair、Priyanjana Bengani、Weihua Li、Omar El Chmouri、Zainab Fattah.
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