(ブルームバーグ):相撲界は今、新たな時代の幕開けを迎えようとしている。
日本の国技である相撲は、これまでになく高い人気を誇っている。新型コロナウイルス禍の影響から立ち直り、2024年の本場所90日間は完売。日本相撲協会の収入も過去最高を記録した。今年秋には、海外では20年ぶりとなる巡業がロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで開催される予定だ。
そして、日本出身の横綱が久々に誕生した。先月、大の里が今世紀2人目の日本出身横綱に昇進。25歳という若さで、これからの相撲界の顔となる可能性を秘めている。
一方で、史上最強の力士とも評された白鵬が、ついに相撲界から身を引くというニュースも伝えられた。2021年の現役引退後は親方として活動していたが、弟子の暴行問題により降格処分を受け、部屋も休止状態となっていた。現在は土俵の外から相撲の振興を目指す姿勢を示している。
これらの偶然の重なりは、日本のアイデンティティーと深く結び付いたこの競技において、世代交代の節目を象徴するものとなるかもしれない。
相撲界ではここ数年、騒動が続き、その存在意義が問われてきた。1980年代のバブル崩壊以降、日本社会の多くの分野が停滞に見舞われたのと同様に、相撲も長年にわたり八百長や暴力団との関係などの不祥事に揺れた。2000年代には信用が地に落ち、テレビ中継は中止、スポンサーも撤退し、観客も減少した。
しかし、世代交代が進む中で、最近の不祥事には世間も動じなくなっているように見える。若手への暴力や大麻問題が報じられても、チケットは瞬く間に完売し、特に若い女性ファンが増えている。
モンゴル出身の白鵬は後に日本国籍を取得し、横綱として歴代最長の在位を誇り、史上最多の45回の優勝記録を打ち立てた。気性の激しい1代前の横綱で同じくモンゴル出身の朝青龍との取り組みを見て、筆者は2000年代半ばに相撲ファンになった。
だが、その大記録に反して、白鵬が常に称賛されていたわけではない。強引な取り口や派手なガッツポーズは、横綱にふさわしい謙虚さに欠けるとの批判も受けた。最近の処遇に不満を抱いていたともうわさされ、現在モンゴルで政治家となっている朝青龍は出るくいは打たれるという趣旨の意味深なSNS投稿をしている。
白鵬は過去の横綱よりも厳しい扱いを受けたという声もある。だが、白鵬は相撲を根本から変えた存在だ。かつては嘆かれていた外国出身力士の台頭も、日本に住む外国人の増加とともに今では当たり前となっている。
ここからは、新たな世代が物語を紡ぐ番だ。大の里には、日本人横綱として久々に真の実力を発揮するチャンスがある。今世紀に昇進したもう一人の日本出身横綱、稀勢の里は早過ぎる昇進と長引くけがに悩まされ、引退に追い込まれた。
大の里はモンゴル出身の横綱、豊昇龍と優勝争いを繰り広げることになるとみられる。豊昇龍は朝青龍のおいで、今年共に角界の頂点に立った日本人と外国人の対決は、どのスポーツにおいても人々を引きつける構図だ。
日本社会は「失われた30年」のアイデンティティー危機から脱却の途上にある。マイナス金利や地価下落といった負の遺産も過去のものになりつつある。危機に揺れた相撲界も、同じ道を歩む時が来たのかもしれない。
(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、日本と韓国、北朝鮮を担当しています。以前は北アジアのブレーキングニュースチームを率い、東京支局の副支局長でした。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)
原題:Sumo Wrestles With a Generational Change: Gearoid Reidy(抜粋)
コラムについてのコラムニストへの問い合わせ先:東京 リーディー・ガロウド greidy1@bloomberg.netコラムについてのエディターへの問い合わせ先:Patrick McDowell pmcdowell10@bloomberg.netもっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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