日本銀行が16日の金融政策決定会合で政策金利を従来から0.25ポイント引き上げ、31年ぶりの水準となる1%としたことは日銀のインフレ進行に対する懸念を反映したものだとストラテジストらは受け止めている。

日銀は今後も金融政策の正常化を継続する方針も示し、国債の買い入れについては2026年度は毎四半期2000億円程度ずつ減額するペースを維持した上で、27年度以降は月間2兆円程度の買い入れを行うことも決めた。

植田和男総裁が感染症罹患による入院で不在となった今回の会合について、ブルームバーグがまとめたエコノミスト予想では51人中、49人が1%への利上げを予想していた。午後3時半から植田総裁に代わり、内田真一副総裁が会見する。

ストラテジストら専門家の見解は次の通り。

TDセキュリティーズのマクロストラテジスト、アレックス・ルー氏

  • 円安トレンドが弱まるためには、日銀のガイダンスが市場参加者に6カ月に1度のペースで利上げを行うか、最終的な政策金利引き上げのゴールが1.5%よりも高い水準になるという確信を与える必要があるだろう
  • 今回は植田総裁が参加しておらず、日銀が利上げに前向きなタカ派的なメッセージを発信するのは難しいかもしれない

サクソ・マーケッツのストラテジスト、チャル・チャナナ氏

  • ほぼ予想通りの政策決定。日銀は明らかに2%の目標を上回るコアインフレ率を懸念しているが、依然として非常に緩やかなペースで政策正常化を進めており、引き続き金融環境は緩和的としている7対1の投票結果もあり、タカ派的なシグナルは弱まっている
  • 利上げにもかかわらず、ドル・円が160円台を維持すれば介入リスクは残ったまま
  • 特に米連邦準備制度理事会(FRB)の政策決定を控え、ドル安に振れる局面があれば、日本の通貨当局にとって介入を行う好機になる可能性がある。米国とイランの合意でドルの主な下支え要因が失われた今、好機だ
  • これだけで円相場の方向性が変わるわけではないが、過去最高水準にある円売りポジションを一部解消させる好機にはなり得る
  • 内田副総裁はあまり知られておらず、市場は当初敏感に反応するかもしれないが、植田総裁や日銀の確立されたコミュニケーションの方針から大きく逸脱する可能性は低い

BNPパリバ・アセットマネジメント 木村龍太郎シニア債券ストラテジスト

  • 27年4月以降の国債買い入れをこれ以上縮小しないとの決定はこれまでの報道と一致しており、驚くべきことではない
  • 一方、国債買い入れについてこれ以上の中間評価を行わないとの声明はQT(量的引き締め)プログラムが近い将来中断されるかもしれないとの市場参加者の臆測を招かないようにする賢明な判断だ
  • 政策委員会が1年後に再度の中間評価を行うと発表していたら、次に議論されるのはバランスシート縮小の中止を示唆するものとなり、円安圧力となる可能性があった

三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美チーフ債券ストラテジスト

  • 日銀が利上げに踏み切っても、今後の利上げペース加速は示唆されておらず、円買い材料にはならないだろう
  • 国債買い入れは27年4月以降は月間2兆円程度で行うとし、減額停止という想定通りの内容で量的緩和的なトーンが残る
  • 浅田委員の利上げ反対は想定内だが、7月会合は審議委員の交代で潜在的な利上げ反対が2票に増えるほか、27年夏には4票に増える可能性もある
  • 植田総裁、内田副総裁の健康問題もあり、金融政策の正常化が可能な時間帯はそれほど長くないかもしれない
  • 日銀がビハインド・ザ・カーブに陥るという懸念は残るだろう

野村証券の松沢中チーフストラテジスト

  • 市場の日銀タカ派化への期待が強かっただけに、0.25%の利上げだけではビハインド・ザ・カーブ懸念は払拭されないという見方から10年債は売られている(金利は上昇)のだろう
  • 今回の発表文からは利上げ加速を示唆する内容は見当たらない。一部で予想された0.5%の利上げ提案はなく、利上げに対し反対票も出た
  • 内田副総裁の会見ではタカ派的な発言はあまり期待できない。日銀タカ派化への期待は為替市場の方が強く、会見後にもう一段の円売りが出る可能性

クレディ・アグリコルCIBのシニアストラテジスト、デービッド・フォレスター氏

  • 政策金利と国債買い入れに関する決定は予想通り。政策委員会が企業間取引に原油価格の上昇が波及し、コアCPI(消費者物価指数)の上昇につながるリスクに言及した点でわずかにタカ派的な傾向が見られたのみだった
  • 全体的に政策委員会は中立的なスタンスを維持し、経済が基本シナリオに沿って推移すれば、さらなる利上げを行う可能性を示唆
  • 0.25ポイントの利上げと年末までの追加利上げは90%以上の確率で織り込まれていたことを踏まえると、円を支えるにはきょうの利上げがタカ派的な内容でなければならなかった
  • しかし、政策委員会のトーンに大きな変化はなく、1人の委員は据え置きを主張し、円はやや軟化している

ロンバー・オディエ・シンガポールのストラテジスト、ホミン・リー氏

  • 27年度の国債買い入れに関する新たな指針はQTの必要性と債券市場の安定性との間で適切なバランスを保っている
  • 東証株価指数(TOPIX)、円、国債利回りの動きから今回の日銀の発表は多くの市場参加者のコンセンサスとおおむね一致し、相場は落ち着いている
  • QTの中間評価が一段落した今、市場参加者は政策委員会が想定する最終的な金利水準のターミナルレートと利上げペースを読み取ろうとしよう。われわれは半期ごとの利上げを想定し、次は26年12月となる可能性が高い
  • 今後は世界的な設備投資ブームとホルムズ海峡リスクの解消を反映した日本株の上昇、日銀の利上げと財務省の介入によるドル・円の上値抑制、イールドカーブのフラット(平たん)化が進むと予想し、日本国債はよりレンジ相場になる

ステート・ストリート・インベストメント・マネジメントの駱正彦チーフ債券ストラテジスト

  • 植田総裁の欠席にもかかわらず、7対1の投票結果は金融政策の正常化に向けた強い姿勢を示しており、リフレ派が明らかに少数派であることが明らかになった
  • 審議委員の交代で7月の会合では7対2に変化する可能性があったとしても、政策の道筋が変わる可能性は低い
  • 日本経済にはファンダメンタルズ面で依然追い風が吹いている。AI(人工知能)関連の輸出好調、貿易収支の改善、NISA(少額投資非課税制度)経由の株式市場への資金流入などだ。外部要因と賃金上昇に支えられた持続的なインフレもあり、日銀は27年までに政策金利を1.5%に引き上げる最終目標に向け順調に進んでいる

インベスコ・アセット・マネジメントの木下智夫グローバル・マーケット・ストラテジスト

  • QTを1年延長するだけではなく、長期的に維持する方針を打ち出したことはサプライズ。国債市場で需給を長期的に緩めてしまうとの懸念が広がり、長期金利に持続的な押し上げ圧力を生む可能性がある
  • 欧米の主要中央銀行よりも速いペースで国債保有を減額しつづけることが正しい政策かどうか、今後大きな議論になる可能性がある

(専門家の見解を追記)

--取材協力:アリス・フレンチ、Matthew Burgess、我妻綾.

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