米ゴールドマン・サックス・グループは、日本で資産運用受託事業に参入してから10年以上が経過した昨年、同事業で初めての顧客を獲得した。

ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント(GSAM)の社長を務める堤健朗氏がインタビューで明らかにした。今年初めには、2件目となる契約を年金基金と結んだほか、現在さらに約10件の潜在的な顧客との交渉が進行中だという。

ここにきて急速に顧客からの関心が高まっているのは、日本の機関投資家が保有資産の運用を包括的に外部に委託する姿勢を強めているためだ。安定的な手数料収入を見込めることから、海外の金融機関も、アウトソースド・チーフ・インベストメント・オフィサー(OCIO)と呼ばれる外部委託事業への参入を進めている。

堤氏はGSAMにとって同事業は「トッププライオリティーの一つ」とした上で「われわれとしては非常に大きな機会だと思っている」と話した。

約20年続いたデフレが終わりインフレ傾向となったことで、日本の年金基金や保険会社はより高い運用実績の実現が求められるようになってきている。政府もまた、OCIOによる専門知識の活用を含め、資産を運用するアセットオーナーに対し受益者へのサービス向上を求めている。

一方で金融機関側も、経営環境の不透明感が強まる中で安定的な収益源の確保を目指し、資産運用事業に傾注している。資産運用業界の調査会社セルーリ・アソシエイツによれば、OCIOが手がける運用資産の規模は世界全体で2028年まで年平均7.9%成長することが見込まれている。

自社運用商品が強み

堤氏は、OCIO業界において、伝統的資産とプライベート資産の双方で自社が運用する商品を提供できるのがゴールドマンの強みだと話す。24年にGSAMの社長に就任した堤氏は、ゴールドマンでのキャリアが20年に及ぶベテランだ。日本国内で獲得した2件の顧客名については秘密保持のため非開示だとした。

現在のOCIO市場でGSAMのライバルとなるのがブラックロックやマーシュ・アンド・マクレナン傘下のマーサーだ。両社も最近、日本で大口顧客との契約を獲得している。

ブラックロックは日本でOCIO関連で6件の契約を交わしており、運用資産は総額2兆5000億円に上ると発表していた。この6件にはNECの企業年金も含まれている。

先月にはマーサーが、みずほフィナンシャルグループ傘下のアセットマネジメントOneを通じて、国内の企業年金基金や学校法人向けなどにOCIO事業を提供すると発表した。

マーサーのウェルスマネジメント部門の責任者を務めるグラハム・エリオット氏は、OCIO事業においては「日本がおそらく国別で最大のビジネスチャンスになっている」と語る。外部の専門知識の活用と運用業務の外部委託を促すため、政府が年金基金や保険会社などを対象に昨年策定したアセットオーナー・プリンシプルが変化の大きなきっかけになったという。

世界最大の年金基金

日本には約260兆円を運用する世界最大の年金基金、年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)があるほか、業界団体のデータによると、企業年金も計約84兆円の資産を運用している。

エリオット氏は、日本の現在の企業型確定給付年金制度を英国の同制度の発展の過程になぞらえて、英国では過去20年間で外部委託の導入が進み、日本も同様の方向に進んでいるとの見方を示した。

日本の個人向けの保険と年金の規模は23年末時点で約790兆円と世界第2位の規模になっており、この領域もOCIO関連事業にとって有望な市場となっている。

GSAMの堤氏は、資産・ウェルスマネジメント事業を拡大するために、より多くの企業年金や保険会社から運用を運用することが優先的な課題になっていると話した。同社の幹部層も日本を同事業の重点地域と位置付けており、「日本の環境は海外からも非常に注目されている」と述べた。

--取材協力:佐野七緒.

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