(ブルームバーグ):5月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数の伸びが減速し、前月分も下方修正された。トランプ政権の経済政策による影響を見極めようと、雇用主が先行きを慎重に見ていることを示唆する内容となった。
非農業部門雇用者数は3月および4月のデータが更新され、2カ月分で9万5000人の下方修正となった。
関税によるコスト増や景気減速懸念で企業が雇用を急速に削減しているとの見方もあったが、今回の統計でそうした懸念は和らぐ可能性がある。トランプ米大統領が中国向けを含む一部関税の一時停止を決めたことで、企業や消費者のセンチメントが改善した。
ハイ・フリークエンシー・エコノミクスのチーフエコノミスト、カール・ワインバーグ氏は「雇用主は大きな不確実性を前に『雇用の温存』を図っている。人員削減にはコストがかかるため、企業はトランプ関税の影響を見極めるまではレイオフに慎重だと当社ではみている」とリポートで指摘した。
統計発表を受け、米国債利回りは上昇。外国為替市場ではドルが買われた。円相場は1ドル=144円台後半に下落。

今週発表された米経済指標では、新規失業保険申請件数が予想外の増加となるなど弱い数字が相次いでいた。
5月の雇用者数増加は、医療や社会福祉、娯楽・ホスピタリティーなどサービス業での堅調な伸びを反映した。同時に、関税の影響を受けやすい業種からは警告サインが出ている。製造業の雇用者数は8000人減と今年最大の落ち込みとなった。一方で過去2カ月連続で減少していた運輸・倉庫業の雇用は、5月は小幅に増加した。
エコノミストや政策当局にとっては、トランプ氏が目指す政府支出の削減が雇用にどの程度の影響を及ぼすかも、大きな焦点となっている。連邦政府の雇用者数は5月に2万2000人減り、2020年以来の大幅な減少となった。
連邦政府の支出削減が受託企業や大学など公的資金に依存する組織にも広がる中、国内で少なくとも50万人の雇用が失われる可能性があるとの見方が、エコノミストの間で出ている。
BMOキャピタル・マーケッツの米国担当チーフエコノミスト、スコット・アンダーソン氏は「労働市場の外見的な底堅さにはほころびが見え始めており、関税を巡る不透明感や政府支出の削減が長引けば、雇用統計の内容は一段と悪化するだろう」とリポートに記した。
労働参加率は62.4%と、3カ月ぶりの水準に下がった。働き盛り世代の25-54歳でも低下した。
アナ・ウォン氏らブルームバーグ・エコノミクスのエコノミストは「失業率が横ばいだったのは『好ましくない』理由によるもので、雇用が豊富だからではなく、労働市場から離脱する人が相次いでいるためだ」と述べた。

米金融政策当局者は、トランプ政権の政策が景気や労働市場に及ぼす影響がより明確になるまでは、利下げを急がない姿勢を示している。4日に公表されたニューヨーク連銀の調査では、「急激かつ急速な関税引き上げが、雇用水準や設備投資に影響を及ぼしたという兆候もいくらかあった」と記された。
インフレ懸念が再び強まる中、エコノミストは労働市場の需給動向が賃金上昇にどう影響しているかにも注視している。平均時給は前月比0.4%増、前年同月比では3.9%増、いずれも市場予想を上回る伸びとなった。
統計の詳細は表をご覧ください。
原題:US Jobs Report Points to Gradual Moderation in Labor Market(抜粋)
(統計の詳細をさらに追加して更新します)
--取材協力:Chris Middleton.もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
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