インフレ抑制という主要な目標の達成を目前にして、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁が任期を全うするかどうかに注目が集まっている。

ラガルド氏は5日の政策決定後に記者会見するが、同氏がスイスの世界経済フォーラム(WEF)のトップの職に就く可能性についての報道を受け、その去就に関心が向けられている。

ECB総裁の任期はあと2年半残っているが、WEF創設者のクラウス・シュワブ氏との間で4月上旬に、WEF会長の職について話し合ったとされ、ラガルド氏がECBの任期途中で辞任するのではないかという臆測を呼んでいる。

ラガルド総裁

前任のECB総裁、マリオ・ドラギ氏も、イタリア大統領就任についての臆測が報じられた際に去就について問われた。前例があるとはいえ、現時点での問い掛けはラガルド氏が岐路に立っていることを浮き彫りにするだろう。

ECBは5日、今サイクルで8回目となる利下げを実施する見込みで、新たなインフレ見通しでも中期的に2%目標の達成が示される公算が大きい。5月のユーロ圏のインフレ率は1.9%と8カ月ぶりに目標を下回った。

英紙フィナンシャル・タイムズによれば、ラガルド氏はWEF会長に就任する際にはその前に「ユーロ圏の物価安定を取り戻す」という条件を自らに課していたとされる。

ECB側はラガルド氏が任期を全うする決意だとコメントしたが、シュワブ氏とラガルド氏の対話については明確に否定していない。少なくともラガルド氏が途中退任を検討した可能性を示唆するものとも受け取れる。

仮に現在のタイミングでの退任を選んだ場合、ラガルド氏は物価安定という最も重要な使命は達成したと明言できる。

今後数週間以内に予定されている戦略見直しは、後任のために道筋を整える機会となるだろう。

また、現在は主要ユーロ圏諸国の政治も比較的安定しており、後任の人選も進めやすい状況だ。

英クランフィールド大学教授で会計・助言会社MHAの経済顧問を務めるジョー・ネリス氏は「今年はラガルド総裁とECBの政策運営が成功を収めた年だ。経済成長の基盤を築き、インフレ問題に区切りをつけ、少なくとも現時点では経済を正常軌道に戻したように見える」と評価する。

ラガルド氏は2019年以降、WEFの理事会メンバーを務めており、会長となる資格も有している。

一方で、任期を全うすべき理由もある。トランプ米大統領の関税措置や貿易を巡る不透明感によって世界的な混乱が続く中、ユーロ圏にはできる限り安定した政策運営が求められている。

また、ECB総裁は米連邦準備制度理事会(FRB)議長に次ぐ世界第2の金融政策責任者という立場でもあり、あえて辞任することには疑問も残る。

フランス国内で高官ポストが空くたびに名前が挙がるラガルド氏。これまではECBの任期を全うするとみられていたが、たとえ記者会見で臆測を否定したとしても、WEFの次期会長が正式に決まるまで、疑念が完全に払拭されることはなさそうだ。

原題:Lagarde’s ECB Future Set for Scrutiny After WEF Job Speculation(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp

©2025 Bloomberg L.P.