(ブルームバーグ):米カリフォルニア州サンフランシスコのレストラン「クインス」は、90ドル(約1万3000円)のトルテッリや600ドルのワインペアリング、ルーリー市長(48)がパワーランチを開催するプライベートダイニングルームが自慢だ。
富豪のローリーン・パウエル・ジョブズ氏は、自身が取得した美術施設について市長と食事しながら意見を交わした。トーマ・ブラボーやシックス・ストリート・パートナーズといったプライベートエクイティー(PE、未公開株)投資会社の幹部も、自家製ピザやパスタを食べながら公共の安全などの課題について話し合った。会議を知る人物が明らかにした。
ミシュランの星付きレストランでのこうした会合は、サンフランシスコ復活を目指すルーリー市長の戦略を反映している。要となるのは富裕層の資金と熱意の活用だ。米リーバイ・ストラウス一族の一員でもあるルーリー氏は、新型コロナ禍を受けた機能不全の象徴と最近まで見なされたサンフランシスコに投資するよう、地元の富裕層や経営幹部に働きかけている。
市長就任から5カ月、ルーリー氏は富豪らと夕食を共にし、企業トップを市庁舎に招き入れ、リベラルで知られるこの地域で、穏健な民主党政治を推進する自身による公共の安全、清潔な街並みといった政策を支援するよう訴えた。同氏は富裕層・経営層のアイデアと資金力によって、中心部の不動産不況やホームレス問題、薬物危機に依然として見舞われるサンフランシスコを再生できると踏んでいる。
サンフランシスコは、約8億ドルの予算の赤字や労働者の不満の高まりに直面している。市長の超富裕層との連携が市民の信頼を損なえば、政治的反発の可能性もある。貧困対策に取り組む非営利団体の元代表だったルーリー氏が政治の初心者で、公職経験がないまま市長に就いたことも、事態を複雑にしている。
ルーリー氏はインタビューで「ビジネスリーダーたちには、私たちが生活をより良くするためにここにいるということを理解してほしい。学校に投資してほしいし、芸術・文化の機関にもお願いしたい。でも何よりも、この地にいてほしい」と話した。
好感
投資家らは、ルーリー氏の発言に好感を抱いているようだ。空室率はなおも記録的な水準に近いものの、人工知能(AI)業界が新たな需要をけん引し、1-3月期の同市のオフィスリース活動は過去10年で最高を記録した。JPモルガン・チェースやブラックストーンなどの金融大手は不動産取引を発表しており、ジェイミー・ダイモン氏やジョン・グレイ氏といったトップ経営者が、ルーリー氏のリーダーシップを称賛している。
「街の雰囲気は明らかに変わった」と語るのは、サンフランシスコの大手開発会社TMGパートナーズを率いるマイケル・コバルビアス氏だ。同氏は、ルーリー市長が経済界にアクセスの機会を与え、人と人をつなぐ方法を理解していると評価する。「彼は億万長者も、現場を動かす人たちも知っていて、両者を引き合わせることができる」と述べた。
サンフランシスコの歴史上、屈指の富豪市長の一人とされるルーリー氏は、自ら寄贈した13万4000ドルのリビアンの電気自動車(EV)で街を駆け巡る。不動産関連の会議では拍手喝采を受け、新装開店するスーパーや百貨店、新たなコンサートをSNSで積極的に発信し、熱狂的な支持を集める。同氏は、小規模な事業者や地域の団体、普通の人々とも接していると強調する。
進歩派が多数を占める監督委員会との対立が絶えなかったブリード前市長とは対照的に、ルーリー氏は民間企業出身の幹部を行政の中枢に迎え、より穏健になった新体制の監督委員会と共に、早くも成果を挙げている。また、非営利団体を率いた経験から、資金調達力にも長けている。
リスクも
とはいえ、富裕層との近しい関係が、影響力を巡る疑念を生むリスクはある。
ルーリー氏の住宅・経済担当顧問は、幼なじみで元ツイッター最高財務責任者(CFO)のネッド・シーガル氏だ。同氏は、かつての上司ジャック・ドーシー氏が創業した決済サービス会社ブロックのロビイストと面会していたことが明らかになっている。
財務開示によれば、シーガル氏は仮想通貨企業リップルから10万ドル超の収入を得ていたほか、同社の株式も多く保有している。リップルは、ルーリー氏のビジネス諮問グループの創設メンバーが率いており、このグループは公共政策に関与する見通しだ。
市長室は、シーガル氏が現在はリップルからの収入を受け取っていないと説明している。
一方、ルーリー氏は、市内有数のオフィスビル所有者であるBXPや他の開発業者を代表するロビイスト、タラ・サリバン氏を市の歴史的保存委員会に任命した。開発計画の成否を左右する力を持つ機関だ。市長室によれば、サリバン氏は利益相反の可能性がある案件には関与しないとされている。
財政赤字
ルーリー氏の最大の課題は、依然として先送りされている予算の赤字約8億ドルをどう埋めるかだ。
先週、ルーリーは非営利団体への補助金と契約を1億8500万ドル削減する予算案を発表した。一時的な予備資金に手を付ける代わりに、1400の市職員の職を削減する方針だ。その大部分は空席か退職予定のものだが、市の職員を代表する強力な労働組合は闘う構えだ。
そして、ルーリー氏の資金調達力がどれほど強大であっても、トランプ大統領が市の財源にさらに大きな穴を開ける可能性がある。ルーリー氏は地元メディアに対し、トランプ氏が連邦政府による資金援助を撤回した場合、市の赤字は2倍以上になる可能性があると述べた。
トランプ氏は、不法移民を連邦移民当局から守るサンフランシスコの「聖域都市」政策を激しく非難し、人気のプレシディオ公園を運営する管理組織の閉鎖を試み、観光名所であるアルカトラズ島を刑務所に戻すという案も打ち出している。ルーリー氏は、こうした挑発についてほとんどコメントしていないが、連邦政府からの資金援助削減を見越し、予算案には4億ドルの予備費を計上している。
原題:San Francisco’s New Mayor Woos the Rich to Revive Battered City (2)(抜粋)
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