AIビデオ通話分析によるニセ検察官の手口の構造的解明

本節では、ニセ検察官を名乗る人物と被害者との実際のビデオ通話記録(図表1)をAIが解析した結果にもとづき、その手口を構造的に解明し、犯人が用いる心理操作のメカニズムを明らかにする。この分析は、詐欺の「ブラックボックス」を可視化する試みである。

1) 初期段階:権威の構築と心理的布石

通話の冒頭で、詐欺師は被害者の本人確認の後、「大阪地検特捜部検事イシノ」と名乗った上で、被害者に対し自身の身分証明として「カード」による身分証明を一方的に通告した。

AIはこの時点で最初の危険信号を特定する。正規の検察官がこのような形で身分証明を要求することは通常想定されず、「大阪地検特捜部」という公的な組織名を騙ることで、事態の深刻さと権威を演出し、被害者を心理的に支配下に置こうとする明確な意図が読み取れる。

この段階の核心は、偽の権威を迅速に確立し、被害者を自身のシナリオに引き込むことにある。

2) 中核手口:偽造身分証による視覚的詐術と判断力の麻痺

次に、詐欺師は偽造された「身分証明書」(氏名、所属、生年月日、公印を模した印影、有効期限を模した日付記載)を提示する(図表2)。

同時に、「ピントが合っていなければ見えにくいでしょう」などと、あたかも映像の問題であるかのように装って声をかけ、被害者を急かし、詳細な確認を妨げる。

AIはこの行為を、「被害者の認知プロセスに介入し、偽造物に対する批判的思考を抑制させる高度な心理操作」と分析する。

身分証は偽造の蓋然性が極めて高く、詐欺師は一瞬または不鮮明な状態で見せることで被害者からの検証を回避する。

これは偽の権威を視覚的に補強し、被害者の判断力をさらに麻痺させる巧妙な戦術である。