(ブルームバーグ):米国債の魅力に疑念が生じる中、オーストラリアとシンガポールの国債が買われ、最上級格付けの代替資産への資金流入が進んでいる。
ストラテジストやポートフォリオマネージャーの間で、米国債が十分なリターンを提供しているかどうかを再検討する動きが浮上。米国の格下げや外国人投資家に不利となる可能性のある税制法案への懸念を受け、世界最大の債券市場を巡り異例とも言える動きが広がっている。
台湾の保険会社は米ドル建て資産から距離を置く方向で、香港の年金基金も米国のさらなる格下げに備えた対応策の検討を指示されている。
シュローダーの債券部門責任者ケリー・ウッド氏(シドニー在勤)は「米国債には大きな財政リスクが織り込まれていない。格下げと財政パッケージ、そして米国債買いから手を引く投資家だ」と指摘。「財政運営の失敗となる可能性が高まっている」と述べた。
こうした状況を受け、世界的に少なくなったトリプルA格付けの国債の魅力が一段と高まっている。
オーストラリア30年国債と同年限の米国債との利回り格差は、ここ1年で最も小さい水準付近で、投資家が豪国債に資金を振り向けていることを示している。
シンガポールの30年国債利回りは、米国債の利回りをこれまでで最も大きく下回る水準に近づいている。
豪10年債利回りは5月30日に11ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下。世界経済の混乱の影響を和らげるため、オーストラリア準備銀行(中央銀行)が追加利下げを示唆しており、これが国債需要を押し上げている。
財政リスク
台湾と日本の保険会社、それに豪州の年金基金は、長年にわたり安全な長期資産と見なし、米国債に資金を投じてきた。しかし、最近のボラティリティーや米国の財政状況に対する懸念が強まり、こうした方針が見直されている。
ムーディーズ・レーティングスが5月中旬に米国の信用格付けを引き下げたことで、格付け大手3社全てが米国を最上級格付けから外した。
ムーディーズは今後数年にわたり米国の財政赤字と政府債務、金利負担がいずれも増加するとの見通しを示した。これは、米政府の財政健全性に対する不安が高まっていることを示す一端に過ぎない。
インベスコの香港拠点でシニア債券ポートフォリオマネージャーを務める丁一飛氏は、米格下げを受けて一部の機関投資家が代替投資先を探し、アジア太平洋地域のトリプルA格付け債などが恩恵にあずかると述べた。
米ドル安も、アジアの投資家に代替資産の検討を促している。台湾ドルが先月、米ドルに対して急騰し、1兆2000億米ドル(約171兆円)規模の台湾生命保険業界への影響が懸念された。台湾当局は市場の不安を和らげようとしており、米ドル安の影響を緩和する目的で、保険会社の資産報告に関する規制緩和を検討している。
ある大手台湾保険会社では、米ドル建て資産の分散を図るため、最上級格付けの豪州および英国の社債への小規模な投資をすでに開始した。この会社の資金運用担当者が、投資判断について話す権限がないとし匿名を条件に語った。
ゴールドマン・サックスは、シンガポール・ドル市場に各国の準備資産運用当局が今後徐々にシフトしていく公算が大きいと予想している。シンガポールはアジアで唯一のトリプルA格付け国だ。
また、バンク・オブ・アメリカ(BofA)によると、豪国債市場では現地年金基金の需要が発行額を上回り、海外投資家は入札で厳しく競い合う必要に迫られる可能性がある。
原題:Asia’s Top-Rated Bonds Lifted by Pullback From US Treasuries(抜粋)
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