(ブルームバーグ):米国に留学したいという中国人の若者の夢は、トランプ政権によるビザ発給停止措置で崩れ去りつつある。
上海の弁護士ドン・アンチーさん(30)は、1月にテキサス大学ダラス校博士課程に入学を申請したが、外国人学生にとって悪いニュースが日々続いている中、留学計画を断念しようとしている。
ドンさんは「いま、米国ではあらゆるものが不透明すぎる」とぼやいた。現在は、豊かで安定したフィンランドやノルウェーのプログラムを検討している。これまで全く検討もしていなかった国々だ。
トランプ政権が米大学留学生に対する審査の強化を推進する中、中国の学生は厳しい状況に陥っている。ルビオ国務長官は28日、中国共産党と関係のある学生や、一部の重要分野を専攻する学生など、中国人学生のビザは「積極的に」取り消されると述べた。また今後の学生ビザ申請についても、中国や香港からの学生に対してはより厳しく審査するとしている。

対応模索
中国人学生は代替案の模索を迫られている。上海を拠点とするコンサルティング会社リードユーウェイ・エデュケーション・テクノロジーの創業者、ジョウ・ホイイン氏は、顧客の少なくとも30%が米国留学の計画を取りやめたり、オーストラリアや英国、シンガポールなどの大学に予備的に出願したりしていると明かす。トランプ政権が中国学生に対する新たな制限を発表した場合、その割合は約50%に高まる可能性があるとジョウ氏は指摘した。
ジョウ氏によると高等教育に米国を目指す家庭は通常、米国の大学にのみ焦点を絞り、他国の大学はほとんど検討しない。現在では状況が変わり、多くの家庭がこれを見直しているという。ジョウ氏は「親が政府で働く共産党員の家庭は非常に懸念しており、米国を選択肢から外すケースもある」と話した。
学生らを取り巻く状況は今のところ、混沌としている。一部の教育アドバイザーは他国への進学を検討するよう勧める一方、他は「騒ぎが収まるまで待つべきだ」と主張する。規制がどこまで広がるのかについても、見解は様々だ。だがトランプ政権下で米中間の緊張が高まる中、ほぼ全員が脅威は大きくなっていると指摘している。
ハーバード・ケネディ・スクールに通う中国人学生で、大学コンサルティング会社クリムゾン・エデュケーションの共同創業者でもある姜方洲さんは、前向きな姿勢を保つよう努めている。先週、トランプ政権がハーバード大の留学生受け入れを阻止するとのニュースを聞き、最悪の事態に備えた心構えをしているという。姜さんの場合、残っているプログラムはあと1学期のため、賃貸契約はそのままにして、当面は様子を見ることにした。
ハーバード大での姜さんは模範的な学生で、ケネディ・スクール学生会副会長を務めてきた。それでも彼は慎重でなければならないと自覚している。「私には大きな目標があるので、盲目的な楽観主義にはなりたくない」と語った。

気まぐれ
一方で、富裕層向けの海外教育サービスを提供するドリーム・エデュケーションの共同創設者デニス・ファン氏によると、一部の学生はトランプ氏が最終的に方針を変更すると見込み、米国留学の計画を維持している。
ファン氏は「顧客の多くは変化する政策にいちいち反応しなくなっており、不測の事態に備えて心の準備を整えている。トランプ氏の1期目と違い、人々は同氏の気まぐれなスタイルに慣れている」と述べた。

上海に拠点を置く国際入学コンサルティング会社ブループリントのブライアン・ワン最高経営責任者(CEO)は、制限は「政治的な偏向」あるとみなされる学生や、センシティブな学術分野と関連がある学生に限定されると考えている。既に米国に滞在している学生は「ソーシャルメディアへの投稿を含む行動に注意を払うべきだ」と呼びかけた。
米国に居住する中国人学生の数は昨年、前年比4%減の約27万7000人だった。それでも中国人はインドに次ぐ第2位の外国人学生グループだ。国際教育研究所(IIE)によると、2023-24年度には米国の外国人学生110万人のうち、約半数をインドと中国が占めた。
ドンさんは近い将来にその仲間入りをするつもりはないと話す。ビザの問題は「学校生活だけでなく、卒業後の計画にも影響する。新たな規則が潜在的な就職機会にも悪影響を及ぼす可能性は極めて高い」と語った。
原題:Chinese Students Ditch US Plans as Trump Vows Crackdown on Visas(抜粋)
--取材協力:Allen K Wan、Diana Li、Gabrielle Ng.記事に関するブルームバーグ・ニュース・スタッフへの問い合わせ先:Hong Kong Filipe Pacheco fpacheco4@bloomberg.net;Shanghai Amanda Wang twang234@bloomberg.net;New York Francesca Maglione fmaglione2@bloomberg.net記事についてのエディターへの問い合わせ先:Ainsley Thomson athomson21@bloomberg.netDavid Scanlanもっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.