ガソリン暫定税率廃止について

暫定税率廃止の影響

現在、ガソリンにはガソリン税の本則税率に「暫定税率」として1リットル当たり25.1円の税金が上乗せされているが、既述の通り、去年12月に自民・公明・国民民主党の幹事長が「暫定税率の廃止」で合意している。

廃止の財源などを巡って協議は難航しており、未だ決定には至っていないものの、廃止された場合には、現行のガソリン補助金が停止される一方で暫定税率の徴収が停止され、ガソリンの卸売価格が暫定税率の分引き下げられることになると見込まれる。

暫定税率廃止後のガソリン価格の行方

ただし、暫定税率が廃止されて小売価格に影響が波及したとしても、その際の原油価格と円相場の状況がガソリン価格の水準を大きく左右する。

そこで、最近の状況を基に、原油価格(ドバイ原油・ドル建て)とドル円レートの組み合わせごとに、25.1円の暫定税率廃止を反映したガソリン価格を試算した。

暫定税率の廃止時期については見通しが立っておらず、今後の政局の行方次第の面もあるが、ここでは、今年年末の税制改正で廃止が正式に決まって26年度から段階的に廃止され、来年の夏に完全に廃止されると想定する。筆者の中心的な見通しでは、26年夏のドバイ原油価格は1バレル62ドル、ドル円レートは137円を見込んでいる。その場合のガソリン価格は1リットル151円へと大きく下がることになる。

ガソリン価格が1リットル151円になったとしても、ガソリン補助金導入前10年間(2012~2021年平均)の平均である144円をやや上回っていることから、歴史的に安い水準になるわけではないが、現在の水準からはかなり下がり、消費者の負担感も軽減すると考えられる。

ただし、暫定税率廃止を巡る政治の議論が難航し続ければ、現行の補助金制度が何年にもわたって長期化する可能性がある。

また、暫定税率そのものは廃止されたとしても、財源を圧縮したり、脱炭素の財源に充てたりする目的で新たな税金が加算されたりして、全体としては暫定税率廃止相当分ほどガソリン価格が下がらない帰結となる可能性も否定はできない。

(※記事内の注記については、掲載の都合上あらかじめ削除させていただいております。ご了承ください)

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 経済研究部 主席エコノミスト
上野剛志)