新NISAの登場により、日本の投資人口はさらに拡大した。なかでもつみたてNISAは投資未経験者の割合が9割近くを占めている。

トランプ関税により世界の株式市場は不安定化したが、一時の混乱は一旦収束したこともあり、新NISAで運用を始めた人の運用パフォーマンスも好転している。特につみたて型運用のケースでは、最高値時点から運用を始めたとしても、含み益に転じている可能性がある。

トランプ関税についての最終結論は見えておらず、株式市場の不安定な局面はしばらく続くと見込まれるものの、つみたて型による長期運用を目指す人は、一喜一憂しないことが必要だろう。

新NISAで投資未経験者の積立投資増える

2024年にリニューアルした新NISAにより、2024年のNISA枠での有価証券買付額は前年の約3.3倍もの急増となった。また、銀行なども含む全金融機関で開設されたNISA口座は436万口座の増加(計2,560万口座)と、年間の増加数としては過去最大となった。

これは、長らく続いたデフレによる低金利や公的年金に対する不安などを背景に、個人による資産運用の必要性が高まっている中で、賃金の上昇や市況の好転とNISA制度の改正がマッチした結果といえよう。

NISA制度を利用した投資の特徴として、同制度が創設されたことで初めて資産運用を行った人の割合が高いことが挙げられる。旧NISA制度であった2023年末における投資未経験者(2013年4月以降に証券総合口座を開いた人)の割合は(全証券会社ベース)、当時の一般NISAで51.6%、つみたてNISAでは89.3%にのぼる。

株式相場の持ち直しで、2024年来の運用パフォーマンスは改善

このようにNISAは多くの投資初心者に道を開いた。一方で、この間の運用環境に目を転じると、今年4月にはトランプ米大統領による一方的な相互関税の発表を機に、株式市場は世界的に混乱するなど、不安定な展開に陥った。この展開には、多くの投資家が気をもんだと推察される。

そこで、新NISA制度が開始された2024年1月以降の株価について、NISAでの人気が高い全世界株(オール・カントリー)投信の指針の一つとなるMSCI全世界株指数の推移を見ると、トランプ大統領が中国やカナダ、メキシコに対して関税をかけることを表明したあたりから軟調に推移し、4月2日の相互関税発表で急落した。

しかし、その後は持ち直しに転じ、足元では年初来高値水準に近づいており、直近(5月27日時点)での2024年初以降の上昇率は+ 21.2%に達している。

ただし、同指数はドル建てであるため、日本から投資する場合のパフォーマンスを見るには円建てに換算する必要がある。同期間のドル円相場は、1ドル=140.87円から同144.27円へと円安となっているため、円建てでの上昇率は+22.6%とドル建てを上回る結果となった。これが、2024年初に同指数に一括投資した場合の円建てでの運用益ということになる。

一方、投資未経験者が大半を占めている積立運用の場合のパフォーマンスを円建てで見ると(2024年1月から毎月一定額MSCI全世界株を購入したと仮定)、こちらも+4.4%の運用益が出ている。

この結果を見ると、相場は一時大きく崩れる局面が見られたものの、新NISA開始時にMSCI世界株指数に一括で投資した人の方が、つみたてNISAで投資した人よりも高いパフォーマンスを得られていることになる。