(ブルームバーグ):29日の金融市場では、ドルが反落。米国際貿易裁判所がトランプ大統領の関税の多くについて違法と判断し、ドルは一時急伸したが、米国の経済成長と雇用関連の統計がいずれも弱く、投資家の不安を増幅させた。
ブルームバーグ・ドル指数は1週間ぶりの高値を付けたが、米国の取引時間帯に入り下げに転じた。対円では一時1.4%高の146円台まで上昇したが失速し、144円台前半に落ち込んだ。米経済は1-3月(第1四半期)に縮小したことが確認され、先週の米新規失業保険申請件数は予想よりも多かった。
裁判所の判断についてホワイトハウスは控訴する方針を既に発表し、トランプ氏が看板政策である関税賦課を確実に行おうとするなら多数の代替措置があるとストラテジストらは指摘した。
今年の市場は関税とその報復措置、トランプ氏による度重なる延期と撤回で動揺が続いているが、裁判所の判決はトレーダーの判断をいっそう難しくする。結局のところ、こうした展開は米国資産が長らく享受してきた特別の地位を失わせ、外国人投資家がポートフォリオを調整する中で「米国売り」が加速した。
元ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント会長のジム・オニール氏は「この先1年で、ドルが弱含む以外のシナリオは考えにくい。ドルは大幅に過大評価されている」と、ブルームバーグテレビジョンのインタビューで指摘。関税引き下げの見通しが浮上してドル相場が安定する可能性もあるが、それは一時的で、他国・地域の株式市場への資金流出が続いてドルを押し下げると、オニール氏はみている。

ブルームバーグ・ドル指数は2月の高値から7%余り下落している。29日は0.4%上昇する場面もあったが、上昇は長続きしなかった。
米10年債利回りは約4ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)低下して4.44%、2年債利回りも4bp低下の3.95%前後で推移している。
みずほインターナショナルの欧州・中東・アフリカ(EMEA)地域マクロ戦略部門責任者ジョーダン・ロチェスター氏は今回の判決について「市場にとっては、同じ道筋・同じ最終目標に向かう中でのわずかな逸脱にすぎない。関税はやって来る」と述べた。「ただし、米国の成長期待がやや高まり、ドルに対する弱気コンセンサスが少し押し戻され、一定のショートカバーはあるかもしれない」との見方を示した。
原題:Dollar Drops on Renewed Trade Uncertainty, Soft Economic Data(抜粋)
(相場を更新し、米経済指標や円相場の記述を加えます)
もっと読むにはこちら bloomberg.co.jp
©2025 Bloomberg L.P.