米マサチューセッツ州ボストン市が、ハーバード大学をはじめとする地元大学に対し、市に数百万ドルを追加で拠出するよう圧力をかけている。トランプ政権が高等教育への攻撃を強化する中で、この取り組みは複雑さを増している。

ボストン市は税を免除されている大学や病院に対し、固定資産税に代わる現金やその他の利益の拠出を毎年求めている。こうした機関は、市の要求額を全額拠出することは一貫して拒否しており、現金拠出額を何年も増やしていない機関もある。ボストン市当局は、より高額な拠出を確保しようと、プログラムの見直しを図っている。

だが、ボストン経済の基盤として長年機能してきた教育機関は現在、複数の脅威にさらされている。トランプ政権は連邦政府による研究費助成を大幅に削減し、大学基金に対する大幅な増税を進めようとしている。

中でも、ハーバード大学は大きな打撃を受けている。トランプ政権は、ハーバード大に対する26億ドル(約3760億円)超の資金援助を凍結し、今後の助成金を打ち切った。キャンパスでの反ユダヤ主義への対応などを巡り対立が激化する中、同大学への留学生の入学を阻止する措置も講じた。トランプ大統領は、ハーバード大学の免税措置の廃止も要求しており、27日には、同大学との残りの契約もすべて取り消した。

関係者らによると、ボストンのウー市長は、ハーバード大学をはじめとする大学に対し、より多くの現金拠出を引き続き求めており、将来的な支払いの長期契約締結を求める姿勢も示している。市長は昨年、この拠出プログラムの見直しについての協議を開始した。

ボストン市のミシェル・ウー市長

事情に詳しい関係者によると、ウー氏はハーバード大、ノースイースタン大、ボストン大、ボストンカレッジとの新たな契約締結を重視している。この4校が昨年ボストン市に拠出した額は、要請された2840万ドルの半分にも満たなかった。市当局者はこれらの大学に対し、要求額全額を支払うことを約束するよう長く求めてきたという。ウー氏はまた、拠出金の計算式を見直し、一部を住宅購入補助などの特定の用途に充てたい考えだ。

市からの継続的な圧力は、大学当局者を困惑させている。大学側は、自発的な合意を見直す適切な時期ではないと主張している。

ノースイースタン大学の広報担当レナータ・ニュール氏は「高等教育がワシントンで直面している重大な逆風を考慮すると、追加拠出の要請のタイミングに驚いている」と述べた。

ウー氏は、トランプ政権の措置が交渉を困難にしていることを認めつつも、市としては資金削減に直面する大学を支援したいとの意向を示した。

同氏はインタビューで「この分野にとって非常に困難な時期だ」とした上で、「私たちは皆、ボストン市民のために全ての機関が適切な役割を果たすよう努めるというコミットメントを共有している。その具体的な形を模索しなければならない」と述べた。

公平な負担

大学が密集する同市の土地の半分は非課税だ。ハーバード大学だけでも、ボストンのオールストン地区に、スポーツ施設やビジネススクールなど数百エーカー(1エーカー=4047平方メートル)の土地を所有している。

昨年ブルームバーグ・ニュースが市評価局のデータ分析に基づき推計したところ、市内に同大学が持つ不動産は総額約40億ドルに上る。収入の約3分の2を不動産税に依存し、中心部のオフィス価値の急落により予算が圧迫されているボストン市にとっては課題だ。

ハーバード大は2024年会計年度、ボストン市に400万ドル超を支払った。市が現金で求めていた額の約60%に相当し、過去の数年間に比べてわずかに増えた。ボストン大は19年から年間630万ドルの拠出額を維持し、ノースイースタン大は20年から毎年190万ドルを支払っている。

トランプ政権の攻撃により、各大学はコスト削減と代替資金の調達に迫られている。ボストン大は業績に基づく給与引き上げを一時停止し、ノースイースタン大は不要不急の出張やイベントを中止した。

ハーバード大も採用を凍結し、影響を受けた研究プロジェクトの維持に自己資金2億5000万ドルを振り向けている。

ハーバード大の代表者は、ボストン市への拠出金を巡る議論に関するコメントを差し控えた。

トランプ氏との対立を受け、民主党政治家らの間では、大学支援の動きが広がっている。それでも、市はトランプ氏の強硬な手法とは異なる視点で、交渉を進めている。当局者はまず、大学との合意を目指していると説明する。また、拠出増の要求は、現在の混乱以前から行われているものだと強調している。

メヒア市議会議員は「大学は長年、公平な負担を免れてきた。控えめに言っても、彼らにはまだ私たちに未払いの債務がある」と述べた。

原題:Harvard Pushed by Boston for Money Even as Trump Escalates Feud(抜粋)

--取材協力:Sarah McGregor.

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