NTT子会社のNTTドコモは、ネット専業の住信SBIネット銀行を買収すると発表した。取得総額は約4200億円となる。

取引完了後、住信SBIネット銀は上場廃止となる。NTTドコモの出資比率は65.81%、残りの34.19%を三井住友信託銀行が保有する。全国約2000店のドコモ系ショップなどを活用し銀行口座の獲得を進めるという。

またNTTは同日、約1100億円を投じ、SBIHD株の8.18%を取得すると発表した。銀行分野だけでなく資産運用や保険領域での新サービスの開発、NTTグループによるSBIグループ向けの金融システムの開発・保守など幅広く連携する。

通信業界は利用者獲得競争が激しくなる中、囲い込み戦略の一環として金融事業の強化を進めている。ソフトバンクは2022年10月にペイペイを子会社化。直近では両社と三井住友カードの3社での協業を発表。KDDIも金融サービスを手がけるauフィナンシャルホールディングスを子会社に持つ。ドコモによる住信SBIネット銀買収が実現し、銀行業に参入すれば競争力向上につながる可能性がある。

NTTの島田明社長は29日の会見で、SBIHDへの出資を通じて、「デジタル技術と金融サービスを融合させ、金融領域を中心にさまざまな領域で革新的なサービスを市場に提供したい」と話した。

しんきんアセットマネジメント投信の藤原直樹シニアファンドマネジャーは、今回の買収はドコモ契約者の囲い込み戦略の一環で、新規を増やすというより解約を阻止する抑止力が期待され、競合他社に「勝つというよりは負けないため」のものだと指摘。ドコモ経済圏の中で投資信託を買うなどの広がりがあれば、別の収益機会も生まれ、ポジティブだとした。

一方、ペラム・スミザーズ・アソシエイツのマネジングディレクター、ペラム・スミザーズ氏は、金融サービスを展開する競合他社と競争するうえで、買収は「NTTグループにとって極めて戦略的な好手だ」と指摘した。

フジHDは関係ない

SBIHDの北尾吉孝会長兼社長は、NTTドコモはショートドラマの制作などを通じて、さまざまな知的財産(IP)を持っていると期待を示し、協力していきたいと意気込んだ。北尾氏はかねてフジ・メディア・ホールディングス(HD)とSBIHDの金融・IT事業を融合させたいと主張していた。NTTドコモはフジHD株を持つものの、今回のNTTとの提携については「フジはまずまったく関係がない」と話した。

(会見のコメントを追加して更新します)

--取材協力:長谷部結衣、堀内亮.

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