日本銀行が28日発表した2024年度決算によると、最終利益に当たる当期剰余金が前年度並みの2兆円超を確保した。一方で利上げに伴う日銀当座預金への支払い利息が急増し、収益をじわりと圧迫している。

日銀は昨年7月と今年1月に追加利上げを実施し、政策金利を0.5%程度に引き上げた。日銀当座預金の超過準備に対する付利金利も0.5%となり、24年度決算における取引先金融機関などに対する支払利息は1兆2517億円と前年度の1887億円から7倍弱に膨らんだ。

年度中に為替相場が円高方向に振れたことを受け、前年度に1兆3021億円を計上した外国為替関係損益が908億円の損失に転じた。この結果、経常利益は2兆7922億円と約40%減となったが、引当金の積み立てが減少したことなどから特別損失が減り、当期剰余金は2兆2642億円と高水準を維持した。配当金の支払いなどを除き、前年並みの2兆1510億円を国庫に納付する。

国債買い入れの減額を進める中で、保有長期国債の残高は16年ぶりに前年度末に比べて減少したものの、市場金利の上昇を受けて国債の受け取り利息は2兆774億円と約20%増加した。同時に、利上げに伴う当座預金付利の支払い利息も拡大しており、利上げ局面における日銀財務の健全性を巡る議論が高まりそうだ。

金利上昇を受けて保有国債の含み損は28兆6246億円と前年度末の9兆4337億円から急増し、過去最大を更新した。ただ、日銀は償却原価法で評価しているため、時価が変動しても損益には反映されない。簿価で37兆円を保有するETFの含み益は32兆8712億円と前年度末の37兆3120億円から減少したが、高水準を維持した。

植田和男総裁は、16日の衆院財務金融委員会で日銀財務に関し、利上げ過程で赤字が発生する可能性に言及しつつ、長期的には保有国債が金利の高いものに入れ替わるため「収益が戻ってくる」と説明した。日銀が昨年12月に示した試算では、一時的に赤字になっても政策運営能力に支障を生じないとしつつ、「財務リスクが着目されて金融政策を巡る無用の混乱が生じる場合、信認の低下につながるリスクがある」としている。

(植田総裁の発言などを追加して更新しました)

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